質量分析計を用いた口腔がんスクリーニングの実用化

2014 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 26861719
• Research Institution: Kobe University
• Principal Investigator: 木本 明 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (30597167)
• Project Period (FY): 2014-04-01 – 2017-03-31
• Keywords: 口腔がん / メタボローム解析 / スクリーニング / バイオマーカー

Outline of Annual Research Achievements

悪性腫瘍は現在日本人の死亡原因の第１位となっており、全体の1/3 を占める。口腔がんは悪性腫瘍全体における比率こそ低いものの、日本の高齢化社会到来に伴い罹患率も増加しており、がんの早期発見に役立つ画期的な極めて早期の診断法開発が強く求められている。我々は、メタボローム解析を用いてその実現をめざしている。
メタボローム解析とは、ある時点における生体試料（体液、組織、細胞等）に含まれる低分子代謝物（分子量1000 以下）を網羅的に定性・定量解析することをいい、近年、バイオマーカー探索や疾患診断に応用する動きが活発化している。我々は、口腔がん患者と健常人の血清をガスクロマトグラフ質量分析計で測定し、比較・検討を行うことで口腔がんバイオマーカー候補となる代謝物を発見してきた。本研究では、血清に加え、血漿、尿、唾液などの生体サンプルを使用し、メタボローム解析を行うことで、スクリーニングに最適な生体材料と最終的な口腔がんバイオマーカーを選定する予定である。本研究の成果は、口腔がんの発症機構や早期治療方法の開発とその実用化につながることが期待される。
本年度は、ヒトサンプルを使用する前段階として、口腔がん担がんマウスモデルを用いた。ヒト由来口腔がん細胞株（HSC-3、OSC-19細胞）をヌードマウスに移植・定着させることで担がんマウスを作製し、形成された腫瘍組織、および、血液、尿などのメタボローム解析を行った。GC/MS(ガスクロマトグラフ質量分析計)により約100種類の水溶性代謝物を同定し、種々のサンプルにおいて有意に変動する代謝物を明らかにすることができた。今後は、ヒトサンプルの収集・分析を行い、今回の結果と比較検討することで、最適な生体材料やバイオマーカー物質を決定する予定である。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

口腔がん担がんマウスモデルを用い、種々の生体材料でメタボローム解析を行うことができた。

Strategy for Future Research Activity

GC/MSに加え、LC/MSを使用することで、水溶性代謝物だけでなく脂溶性代謝物の同定、比較検討を行う予定である。
現在、ヒトサンプルの収集も同時に行っている。血液などに比べ、尿サンプルは患者さんの同意が得にくい状況であるため、分析結果に関わらず最終的な最適材料となるのは難しいと考えられる。

Causes of Carryover

GC/MSの専用カラムの交換回数が当初予定していたより少なかったため。

Expenditure Plan for Carryover Budget

来年度以降は、ヒトサンプルの分析も加わってくるため、当初の予定通りのカラム交換が必要になると思われる。