2015 Fiscal Year Research-status Report
ボツリヌス毒素誘発性の機能低下モデルを用いた形態成長と機能発達に関する統合的研究
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26861795
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
内海 大 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 客員研究員 (80622604)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 歯科矯正学 / 咀嚼運動メカニクス / ボツリヌストキシン / マウス / ハイスピードカメラ |
Outline of Annual Research Achievements |
オスICRマウスを用いて、咬筋および側頭筋に対してボツリヌストキシンを注入して機能低下モデルの構築に成功した。これにより特定の咀嚼筋の機能を低下させ、顎口腔へもたらす影響を明確化することが可能となった。また、ハイスピードカメラによる咀嚼運動3次元計測と動物実験用3DマイクロCTにて撮影した顎顔面形態データを組み合わせることで、下顎頭、臼歯部なども含めた下顎骨全体の運動様式の解析システムの構築に成功した(第74回日本矯正歯科学会大会にて発表2015年11月)。 このモデルマウスを用いて筋活動記録および3次元顎運動の計測を行ったところ、咀嚼運動において、側頭筋機能低下群では咬筋活動の減少が認められ、マウスにおける主な食品粉砕臼磨運動期であるLate-closing phaseが短縮していた。これは、側頭筋の代わりとなる下顎を後方に牽引する閉口筋が他には無く、マウス特有の咀嚼運動様式である後上方へ下顎を引き上げた後に前方に臼歯をすり合わせて食品粉砕臼磨する運動が行えなくなったことによる影響と考えられた。一方で咬筋機能低下群では、咀嚼運動における下顎運動の安定性の低下が認められ、咬筋機能低下により咀嚼筋間のパワーバランスが崩れたことが原因と考えられた。(第74回日本矯正歯科学会大会にて発表2015年11月)。 本研究の目的と現在の研究結果を参照すると、咀嚼運動において咬筋―側頭筋の関係のように咀嚼筋は各筋が協調運動を行うことにより正常機能しており、咀嚼筋の一部に障害が起こることで咀嚼様式全体に影響を及ぼすことがわかった。これらの障害が咀嚼機能形成過程もしくはそれ以前の時期に起こることで、機能・形態も含めた顎口腔期間全体に大きく影響することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の目的に記載した事項(①摂食・嚥下機能低下が顎口腔諸器官に対し、どのような変化をもたらし、機能発達と形態成長にどういった影響を与えるのか。②正常な機能獲得の臨界期 (critical period) は存在するのか。また、獲得時期の違いによる形態成長への影響は生じるのか。③成長発達に関する先天的・遺伝的保因者に対して、機能的介入による正常な機能・形態獲得は可能か。訓練開始の期限はいつか。完全獲得が不可能な場合はどの程度まで回復可能か。)において概ね指標となるデータの算出に成功している。 但し②③については、乳幼児期モデルに対する実験結果は未解析となっていることから、現状として完全に満足できる達成度とは言えない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に予定していた構築した実験モデルの実験匹数の増加および計測データの解析については、概ね達成することができたため、これらのデータをまとめ論文投稿する予定である。また、乳幼児期モデルの実験匹数の増加およびデータ解析を試みる。
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Causes of Carryover |
マウスの実験施行匹数が予定よりも少なく、それらに関わる実験物品費用が減少したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に予定匹数を追加して実験を行う。
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