2015 Fiscal Year Research-status Report
マラリアにおける宿主病原体相互作用への腸内細菌の影響の解明
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26870094
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
谷口 委代 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20620800)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | dysbiosis / マラリア / ネズミマラリア / 腸内細菌 / 脳マラリア / Plasmodium berghei ANKA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、マウスモデルを用いてマラリアと腸内細菌の双方向の影響を、1)マラリア原虫感染の腸内環境への影響、2)腸内細菌のマラリアの病態に与える影響、3)関連する腸内細菌の特定について解析することで、マラリア原虫感染おける宿主病原体相互作用への腸内細菌の影響を解明することを目的としている。 今年度は、昨年度に引き続き2)と3)について、ネズミマラリア原虫Plasmodium berghei ANKA株(PbA)感染において感受性を示すC57BL/6(B6)マウスと抵抗性を示すBALB/cマウスを用いて、以下の解析を行った。次世代シーケンサーを用いた腸内細菌叢の解析から、PbAを感染させたB6マウスにおいて、腸内細菌叢が劇的に変化して腸内細菌バランス失調(dysbiosis)を起こしていることを突き止めた(Sci Rep. 5:15699, 2015)。また相関解析から、Parasitemia(原虫の赤血球寄生率)および脳症状と相関が認められる菌が、B6マウスにおいて23属、BALB/cマウスにおいて16属、判明した。その内、B6において特異的な菌は10属、BALB/cにおいて特異的な菌は3属見出され、残りは、両マウスに共通する菌であった。これらの結果から、マラリア感染において共通して変化する菌および脳マラリアを含むPbA感染の感受性および抵抗性に関与する可能性のある菌が絞り込まれた。我々はその中でも、PbA感染B6マウスにおいて脳症状発症前に顕著に減少するLactobacillus属に着目し、B6マウスの糞便からMRS培地を用いてLactobacillus属を分離・培養して、16S rRNA遺伝子 の塩基配列を決定することにより、感染により顕著に減少するLactobacillus菌を同定した。現在、同定菌を移植してネズミマラリア感染における宿主免疫応答の解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
同定腸内細菌種を移植して行うネズミマラリア感染における宿主免疫応答の解析の一部は、詳細な解析に至っていない部分も見られるが、マラリア原虫感染おける宿主病原体相互作用への腸内細菌の影響を解明するための目的としている3)関連する腸内細菌の特定に含まれる関連する腸内細菌の分離・同定まで進めたことは大きな進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成27年度に得られた結果を基にして、引き続き3)関連する腸内細菌の特定について、ネズミマラリア原虫Plasmodium berghei ANKA株(PbA)感染において感受性を示すC57BL/6(B6)マウスと抵抗性を示すBALB/cマウスを用いて、以下の解析を行う。 同定腸内細菌種を移入してネズミマラリア感染における宿主免疫応答の解析は、マウスに抗生剤を投与後、同定した菌種を経口投与することにより腸内細菌叢を再構築してマラリア感染実験を行い、脳症状のスコアリング、Parasitemia(赤血球の原虫寄生率)の動態、生存率で、その菌種のマラリア感染に与える影響(防御あるいは増悪に働くのか)を評価する。宿主免疫応答の解析は、炎症に働くCD8T細胞、Th1、Th17、Treg の分化・機能を解析して、どの細胞・因子がその病態に関与しているのかを特定する。
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Causes of Carryover |
腸内細菌のマラリア病態に与える影響を調べるために、抗生物質(ampicillin, neomycin, vancomycin, metronidazole)を投与して腸内細菌を減少させたマウスにPlasmodium berghei ANKA株を感染させる実験系を用いて、無菌マウスを用いた実験系を行わなかったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
既に16S rRNA遺伝子を用いた次世代シークエンサーによる菌叢解析によりネズミマラリア原虫Plasmodium berghei ANKA(PbA)感染に伴って腸内細菌叢変化が起こることを報告しているが(Taniguchi T et al Sci Rep, 2015)、腸内細菌が無い状態がマラリア感染病態に影響を与えるのかを確認するため、また分離・同定菌のマラリア感染病態への影響を調べるため、無菌C57BL/6(B6)およびBALB/cマウスにPbAを感染させて、あるいは分離菌の投与後、PbAを感染させて感染動態と脳マラリアの検討を行う。
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[Journal Article] Plasmodium berghei ANKA causes intestinal malaria associated with dysbiosis.2015
Author(s)
1)Taniguchi T, Miyauchi E, Nakamura S, Hirai M, Suzue K, Imai T, Nomura T, Handa T, Okada H, Shimokawa C, Onishi R, Olia A, Hirata J, Tomita H, Ohno H, Horii T and Hisaeda H.
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Journal Title
Sci Rep
Volume: 5
Pages: 15699
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] Plasmodium berghei ANKA infection induces intestinal dysbiosis2016
Author(s)
Tomoyo Taniguchi, Eiji Miyauchi, Shota Nakamura, Makoto Hirai, Kazutomo Suzue, Takashi Imai, Takahiro Nomura, Tadashi Handa, Hiroko Okada, Chikako Shimokawa, Risa Onishi , Alex Olia, Jun Hirata, Haruyoshi Tomita, Hiroshi Ohno, Toshihiro Horii and Hajime Hisaeda
Organizer
ICI2016
Place of Presentation
メルボルン(オーストラリア)
Year and Date
2016-08-21 – 2016-08-26
Int'l Joint Research
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