2014 Fiscal Year Research-status Report
生物指標を用いた越境大気汚染モニタリングシステムの開発
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26870241
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大石 善隆 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 博士研究員 (80578138)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生物指標 / 越境大気汚染 / コケ植物 / 高山帯 / 多環芳香族炭化水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は中部山岳地域の山域に広く分布する生物種を対象にして、GC/MS を用いて植物内に含まれるPAHs(16 種類)を分析し、各種のPAHsに対する指標性について考察した。さらに、高山帯におけるPAHs汚染の現況の把握を行った。 1.PAHsの分布について 高山帯に広く分布している「シモフリゴケ」と「フトゴケ」のPAHs吸収特性を比較した。シモフリゴケとフトゴケに含まれるPAHsを分析した結果、蓄積されるPAHsの総量は種間で変化が大きいが、異性体比については種間の相違が小さかった。これは、群落の構造の違いによって、コケが大気からPAHs吸収する効率は異なるが、吸収するPAHs自体は変わらないためであると考えられる。以上の結果より、コケに含まれるPAHsの異性体比はPAHs汚染評価の有用な指標になるが、PAHsの総量を比較する際には、同じ生育形をもつコケを指標にするなどの配慮が必要になると考えられた。
2.高山帯におけるPAHsの分布について 低地で採取したコケサンプルのPAHsを比較対象として、高山帯のコケに含まれるPAHsの特徴について検討した。その結果、低地と比べて、高山域のサンプルでは分子量の小さなPAHsが高い割合で含まれていることが明らかになった。これは、PAHsの発生源から離れている高山域では、分子量の大きな重いPAHsは到達しづらいためであると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の成果から、PAHs評価に有用な種の選定をすることはできた。しかし、越境大気汚染との関係については議論できたなかった。この理由について、サンプル範囲が長野県中~南部のみであり、サンプル間におけるPAHsの異性体比などのばらつきが小さかったこと、などがあげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、調査地を中部山岳地域から広げ、越境大気汚染とPAHsとの関係について考察を深めていく予定である。
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Causes of Carryover |
PAHs特性の把握に用いる予定だった一部のコケ植物種について、分布地域が限られていたため、本年度はサンプルとして使用しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越された予算について、次年度に新たなサンプルの分析費用として用いる。
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