2015 Fiscal Year Research-status Report
道徳哲学のドイツ的諸形態に関する研究―理論と実践の観点から
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26870276
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Research Institution | Nagoya Keizai University |
Principal Investigator |
大塚 雄太 名古屋経済大学, 経済学部, 准教授 (70547439)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ドイツ啓蒙 / フランス革命 / 道徳哲学 / カント / フィヒテ / メーザー / ガルヴェ / 理論と実践 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も当初の計画を再編する形で研究を遂行した。具体的には、28年度に予定していた、フランス革命評価を中心とするカントとフィヒテの「理論」分析を前倒しした。ガルヴェの道徳哲学の分析を前半2年に計画していたが、彼の思想的特質を描き出すにあたって、対比的に扱うカントやフィヒテの理論的骨格を先に把握しておいたほうが効果的であると判断したためである。結果としてこの手順により、十分な成果を得た。カントとフィヒテの共通項と差異とが明確なものとなっただけでなく、本研究の重要課題の一つである、彼らとガルヴェとのあいだの共通項と差異とが浮上してきている。もっとも、この課題をより効果的に進めるに際して、少なくともガルヴェのフランス革命評価は参照必須であり、この点については分析を進めた。彼の政治的諸著作の分析を通じて、各思想家の特質が対比的に明らかになるとともに、「理論と実践」の対立軸もいっそう明らかになった。近代ドイツ思想史の新たな側面の開拓は、着実に進んでいる。前年度のメーザー研究に関しては研究会報告を行い、同時代の歴史学系研究者との共通認識が生まれただけでなく、近代ドイツに関する新しい展望を共有できたことが大変有意義であった。今後の思想史研究において、歴史学的視点と蓄積を十分に活用できるよう、研究交流を続けたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の再編は合理的措置であり、順番の前後を除けば当初の計画を着実に実行している。研究成果の公表と発信も滞りない。前年度に積み残された課題を消化しきれなかったが、計画再編によって研究効率が向上しているので、本年度は集中的に取り組むことが可能であると考える。ただし海外調査の時間的余裕がなく、その分を国内で収集可能な文献購入に充てることによって、最新の研究動向の把握および史料分析を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
「理論と実践」というテーマに関して、本研究は思想史的アプローチによりその具体像と対立軸とを解明しようとするものであり、基礎的課題について研究計画の変更は伴わない。とはいえ、「理論と実践」というテーマそれ自体は、きわめて通時的な性格をもってもいる。したがって近代と通底する現代的課題をもつねに意識し、知見を深める必要があると考える。
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