2014 Fiscal Year Research-status Report
マルチスケール対応型バイオマス物質循環プロセスコアモデルの開発
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26870340
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松井 孝典 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30423205)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 森林管理 / バイオマスエネルギー / 物質循環 / 森林生態系 / 生態系サービス / 最適化 / 二酸化炭素固定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではDPSIR構造に従って、バイオマス生産から原料バイオマス、製品バイオマスおよび副産物・残さ、民生バイオマス消費、廃棄物系バイオマスおよびバイオマス由来サーマル・マテリアルリサイクル、最終処分に係る一連のバイオマス物質循環プロセスを表現可能なモデルを構築し,様々な空間スケールや発展度の異なる地域で適用可能となるようにモデル構築支援環境(バイオマス物質循環プロセスコアモデル)を開発することを目的とする。本年度の成果は,重要なドライバーのうち人口減少に伴うバイオマス需要に着目し,木材生産・利用システムの全体最適化を支援するためのシミュレーションモデルの開発を行った.地球温暖化緩和のための炭素排出量削減には,森林管理による生態系炭素固定量を増加させるとともに,家具や建材などの用材に貯蔵することで炭素を固定し,さらに木材をバイオエネルギー利用することで化石燃料代替することが有効であるため,森林施業による森林生態系炭素固定量の増加と社会での木質バイオマス利用による炭素固定量と化石燃料代替効果の増加を統合して,木材生産・利用システムの全体最適化を支援するためのシミュレーションモデルの開発を行った.日高川流域および有田川流域を分析対象地域とし,森林施業ケースは主伐期と間伐面積率の組み合わせ66ケースで森林管理モデルBGC-ES Version1.1を用いて,2010年を基準年として2100年までの生態系炭素固定量と累積の木材炭素固定量を分析した.対象地域の用材出荷量,温浴施設の燃料消費量,園芸施設の作付面積から,用材需要量と各施設の熱需要を算出し,毎年の木材生産量と需給バランスを比較し,木質バイオマスのエネルギー利用による化石燃料代替効果や用材による炭素固定量を複数の森林施業ケースで分析した. 2010年比の2100年の生態系炭素固定量が最大となるケースを特定した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体的には,DPSIR構造に従って,木質系バイオマスについて,生産から原料バイオマス,製品バイオマスおよび副産物・残さ,民生バイオマス消費,廃棄物系バイオマスおよびバイオマス由来サーマル・マテリアルリサイクル,最終処分に係る一連のバイオマス物質循環プロセスを炭素・窒素ベースで表現可能なモデルの基盤部分を構築することができている.本研究では特に,I.物質の表現単位の厳密化,II.生態系プロセスモデルとの連携,III.経済・経営パラメータの導入,IV.適用可能な空間サイズの拡張,V.モデルの可読性・操作性の向上を重点開発課題に挙げている.このうち,I,IIについては森林管理を生物地球化学過程モデルをベースに表現できるシミュレーションモデルに改良しており,当初の目標を得ている.またIIIの経済性応答について,現段階はバイオマスの需給バランスという意味ではバイオマス生産・消費の経済性を代理的に表現しているが,PES等による影響をモジュールとして明示的にモデル内に実装するまでには至っていないため,ここも課題として示される.さらに今回用いているBGC-ESは基本的には単位面積あたりのバイオマス成長を表現しているため,ダウンスケーリングは問題なく処理できるが,現段階では厳密には対象領域内のメッシュ間を連動させた上での空間明示型にはなっていないため,ここはIVの課題として下期で対応を予定している.
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Strategy for Future Research Activity |
上記の達成度でも示したように,経済性モジュールと空間表現がより詳細になるようにシミュレーションモデルを開発する必要が有ることがベースラインの課題となる.今後はこれを廃棄物・畜産系バイオマスにインスタンス化するための方法論や,気候変動や人口動態、産業構造の変動など他のドライバーにも応答するモデルへの拡張を優先的にこなう予定である.また,本シミュレーションモデルは実際の林業の現場などへ有用な情報を提供することが重要な要求仕様であるため,森林組合や木質素材産業のステークホルダーとの情報交換を行うことが重要な課題といえる.
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Causes of Carryover |
予定当初よりもモデルの開発に時間を有したため、専門家ヒアリングの実施が次年度繰越のタスクになっており、本年度は積算していた人件費、謝金などの執行がなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度において、構築したシミュレーションモデルに対して、高度な専門家ヒアリングを行うことで執行を予定している。また論文投稿が当初よりも進んでいるため、英文校正や投稿料での執行を計画している。
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