2014 Fiscal Year Research-status Report
低酸素誘導因子による脂肪細胞の脂質代謝変化がグルカゴン様ペプチド分泌に及ぼす影響
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26870409
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
木平 孝高 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (90377276)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 脂質代謝 / 糖尿病 / 低酸素誘導因子 / Lipin1 |
Outline of Annual Research Achievements |
高脂肪食を負荷した脂肪細胞特異的HIF-1α欠損(ahKO)マウスと同様に高脂肪食を負荷した野生型マウスの脂肪組織サンプルを用いて網羅的遺伝子発現解析を行った結果、トリグリセリド合成に関わる遺伝子群の発現が、ahKOマウスにおいて低下していることが明らかとなった。この遺伝子の中からHIF-1αにより制御されている遺伝子を探索する目的で、低酸素処理した3T3-L1脂肪細胞を用いて、real time PCR法により解析を行った。その結果、ジアシルグリセロールの産生に関わるLipin1遺伝子が低酸素処理により発現上昇することが明らかとなった。また、ウエスタンブロッティングによる解析から、Lipin1のタンパク質レベルは、野生型マウスに比べahKOマウスの脂肪組織で有意に低下していることが明らかとなった。さらに、ahKOマウスの血清トリグリセリド、遊離脂肪酸を測定したところ、ahKOマウスにおいて低下傾向にあった。これらの結果は、脂肪細胞のHIF-1αの欠損により、脂質代謝に変化が生じていることを示唆している。そこで、HIF-1αによるLipin1の制御機構を明らかにするため、3T3-L1を用いて解析を行った。その結果、Lipin1のタンパク質レベルは、RNAレベルとは異なり、低酸素刺激において低下することが明らかとなった。Lipin1は、小胞体ストレスにより発現低下することが知られていることから、低酸素刺激による小胞体ストレスの上昇が、低酸素刺激によるLipin1の発現低下を引き起こしたと考えられる。実際、Tunicamycinにより小胞体ストレスを誘発すると、Lipin1の発現が低下することが明らかとなった。これらのことから、Lipin1は、HIF-1αによる制御だけでなく、小胞体ストレス経路による制御も受けていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請では、初年度に、1)本研究のahKOマウスの脂肪細胞におけるトリグリセリド代謝関連遺伝子の発現変化解析、2)3T3-L1脂肪細胞を用いたトリグリセリド代謝関連遺伝子の発現変化の解析、3)shRNA発現ベクターの構築を行う計画を立ている。以前のマイクロアレイの解析から、中性脂肪合成に関わる遺伝子群の発現が、脂肪細胞特異的低酸素誘導因子(HIF-1α)欠損(ahKO)マウスにおいて低下していることを明らかとしている。本年度の研究により、これら遺伝子の中でも、特にLipin1が強く低酸素により影響を受けることを見いだしたため、Lipin1に焦点を絞って解析を行う方針とした。1)に関しては、ahKOマウスの精巣上体脂肪組織においてLipin1の発現解析を行い、Lipin1のmRNAおよびタンパク質レベルが低下していることを見いだした。また、2)に関しては、3T3-L1脂肪細胞を低酸素環境下に置くと、Lipin1の発現が、mRNAレベルでは増加することを見いだした。しかしながら、タンパク質レベルについては低下することが明らかとなった。このことから、脂肪細胞におけるLipin1タンパク質の発現制御は、タンパク質レベルにおいて行われている可能性が示唆された。小胞体ストレスを誘発するTunicamycinを処置すると、Lipin1の発現が低下することから、小胞体ストレスがLipin1の発現低下の一因であることが考えられる。このように、3T3-L1細胞におけるLipin1の発現制御の解析を進行してきた。最後に3)については、HIF-1αとLipin1のshRNA発現ベクターを作製する予定であるが、現在のところHIF-1αのshRNA発現ベクターが完成した段階であり、Lipin1のshRNA発現ベクターは作製中である。以上のことから、本研究はおおむね順調にしていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、主に3T3-L1脂肪細胞を用いて解析を行っていく。まず、低酸素誘導因子(HIF-1α)によるLipin1制御の詳細を明らかにする必要があると考えるため、HIF-1αの活性化剤や抑制剤を用いてLipin1の発現に対する影響を観察する。また、HIF-1αのshRNA発現ベクターを用いた解析を行い、HIF-1αによるLipin1制御の検討を行う。HIF-1αは、低酸素条件のみならず、増殖因子、サイトカイン等によっても発現増加するため、肥満に関連する因子、インスリン、TNFα等を脂肪細胞に処置し、これに対するHIF-1αの増減およびLipin1の発現変化についても解析を行う。また、Lipin1は、代謝制御に加え、脂肪細胞の分化に対しても影響を及ぼすため、分化中の3T3-L1細胞におけるLipin1の発現制御についても解析を行う予定である。次に、3T3-L1細胞のHIF-1α発現に伴う代謝変化について解析を行う。代謝変化の指標として、トリグリセリド、リン脂質、コレステロール、遊離脂肪酸の量的変化を用いる予定である。それぞれについて、細胞内外の濃度を市販のキットを用いて測定し、HIF-1αの発現により代謝がどのように変化するかを評価する。また、HIF-1αの発現抑制または増加により、代謝がどのように変化するかも解析を行う。さらに、脂肪細胞の代謝変化による代謝産物の変化が、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の分泌に及ぼす影響を観察するため、GLP-1分泌細胞であるGLUTag細胞に、3T3-L1脂肪細胞の解析で変化のあった代謝産物を処置し、GLP-1分泌の観察を行う。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Deletion of hypoxia-inducible factor-1α in adipocytes enhances glucagon-like peptide-1 secretion and reduces adipose tissue inflammation2014
Author(s)
Kihira Y, Miyake M, Hirata M, Hoshina Y, Kato K, Shirakawa H, Sakaue H, Yamano N, Izawa-Ishizawa Y, Ishizawa K, Ikeda Y, Tsuchiya K, Tamaki T, Tomita S
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Journal Title
PLoS One
Volume: 9
Pages: e93856
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Angiotensin II alters the expression of duodenal iron transporters, hepatic hepcidin, and body iron distribution in mice2014
Author(s)
Tajima S, Ikeda Y, Enomoto H, Imao M, Horinouchi Y, Izawa-Ishizawa Y, Kihira Y, Miyamoto L, Ishizawa K, Tsuchiya K, Tamaki T.
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Journal Title
Eur J Nutr
Volume: -
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Overexpressed HIF-2α in Endothelial Cells Promotes Vascularization and Improves Random Pattern Skin Flap Survival.2014
Author(s)
Morimoto A, Tomita S, Imanishi M, Shioi G, Kihira Y, Izawa-Ishizawa Y, Takaku M, Hashimoto I, Ikeda Y, Nakanishi H, Tamaki T.
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Journal Title
Plast Reconstr Surg Glob Open
Volume: 2
Pages: e132
DOI
Peer Reviewed
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