2015 Fiscal Year Annual Research Report
西アフリカ・半乾燥地で近年頻発する洪水-その発生メカニズムの解明と対処技術の提案
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26870475
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Research Institution | Japan International Research Center for Agricultural Sciences |
Principal Investigator |
伊ヶ崎 健大 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 生産環境・畜産領域, 研究員 (70582021)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 乾燥地 / 流域管理 / 水災害 / クラスト / 砂漠化 / 貧困 |
Outline of Annual Research Achievements |
砂漠化の最前線として知られる西アフリカ・サヘル地域では干ばつ被害が慢性化しているが、近年洪水被害も急増しており、2010 年には両者の被災者数が並んだ。既往の研究では、この洪水が休閑地の減少に起因するとされている。しかし、研究代表者らのこれまでの研究から、適切に管理された耕地と休閑地では土壌浸透能に大きな差は認められないことが明らかとなった。その一方で、近年の洪水は、風食に伴う耕地の地表面でのクラスト層(水を通しにくい層)の露出に起因する可能性が高いことも示唆された。そこで本研究では「サヘル地域で近年頻発する洪水は耕地でのクラスト層の露出に起因する」との仮説を立て、サヘル地域の農業生態系における最近50年の水循環の変化を再現することで、上記の仮説を検証した。得られた成果は下記の通りである。①本研究の対象地に近接するニジェール国ニアメ市での観測結果から、サヘル地域の主要河川であるニジェール川への雨水の流出割合は最近50年で約1.8倍増加していることがわかった。②SWATモデル上で1965年(砂漠化以前で雨が多かったものの洪水は発生していない時期)および2010 年(砂漠化が進行し雨は多くないものの大規模な洪水が発生している時期)の土地および土壌の条件を再現し、同一の気象条件を与えた際の直接流出率を算出したところ、砂漠化が進行した2010年の直接流出率が1965年の約1.6倍に増加することが示され、①の流出割合の増加をほぼ説明できることがわかった。よって、上記の仮説は概ね正しいことが示された。③水食によるガリーの伸長も①の流出割合の増加に寄与している可能性が示された。④「耕地内休閑システム」を流域のクラスト層が露出した全耕地に導入することができれば、直接流出率を大幅に抑制できることがわかり、同技術が洪水対策としても有効であることが示された。
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Remarks |
第25回日経地球環境技術賞・優秀賞受賞 (2015年11月6日)
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