2014 Fiscal Year Research-status Report
他者の意見が審美的評価に与える影響と脳内機構の研究
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26870658
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石津 智大 早稲田大学, 文学学術院, 研究員 (50726669)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 神経美学 / 審美同調 / tDCS |
Outline of Annual Research Achievements |
権威者や身近な友人など他者の意見を知ることで,それに同調するように自分の意見を変える傾向を同調現象と呼ぶ.本研究では,1)審美的判断における同調現象(審美同調)の生起に関わる脳内機構を特定し,2)その活動を電流刺激装置を用い変化させることで,個人の審美的判断に影響を与え得るか調べることが目的である. まず,審美同調が生じる実験課題を確立するため,行動実験を行った.この実験では,具象絵画を刺激とした審美的評価課題で,他者意見の情報が与えられた場合に,刺激の評価に同調が生じることを確かめた.この結果は,ビエナ大学で行われたPsychological Research Talksにて発表した. 次に,上述の行動実験で用いた絵画刺激について,審美的評価と情動的評価を行う際の脳活動を,機能的MRIによって調べた.異なる心的プロセスである審美と情動のレーティングを行い,それぞれに相関して活動する脳領域を検討することで,同調現象の起きていない状態の審美評価について関連する脳活動を調べるためであった.その結果,審美的評価課題では報酬系の一部である内側眼窩前頭皮質の活動が示された一方で,情動評価課題では,尾状核や被殻など,感情処理に関する脳領域が働くことがわかった.両者の比較から,内側眼窩前頭皮質が,審美的判断に選択的に関与する脳領域であることを示した.この研究成果の一部はFrontiers in Human Neuroscienceに原著論文として掲載された.現在,行動実験で確立した実験課題を用いて,審美同調に関わる脳内機構について,内側眼窩前頭皮質の反応を中心に検討している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験心理学的手法で,審美同調現象を生じさせることのできる行動実験課題を確立し,カンファレンスで成果発表を行った.また,審美的判断に関する基本的な脳内機構を,情動的評価の脳活動と比較することで明らかにし,国際学会誌で発表した.また,次年度で行う経頭蓋直流電気刺激法を用いた研究のための実験環境を整備した.このように,行動実験,脳機能画像実験を並行して進めており,研究目的である審美同調現象に関する脳内機構の解明に向けて,おおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では,初年度で確立した行動実験課題を用いて脳機能画像実験を行い,審美同調現象に直接関与する脳活動を調べる.内側眼窩前頭皮質の活動変化とともに,情報統合や衝動性のコントロールを行う外側前頭前皮質の活動を予想している. また,頭皮上を微弱な電流で刺激することで,その直下の脳部位の活動に影響を与えることのできる経頭蓋直流電気刺激法を用いて,上述の関連脳部位の活動を変化させ,個人の審美判断に影響がみられるか検討を行う.尚,脳刺激研究では,状況に応じて経頭蓋磁気刺激法と併用して実験を行う.
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Causes of Carryover |
次年度で行う経頭蓋直流電気刺激装置を使った実験のデータ解析用プログラムの購入費であったが,当該プログラムの大規模アップデートが行われるため,アップデート後のプログラムを購入するという理由で次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越金は,当初計画の通り,経頭蓋直流電気刺激装置を使った実験のデータ解析用プログラムの購入費とする。
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