2014 Fiscal Year Research-status Report
レプチンによる肝臓及び膵臓自律神経調節と糖代謝改善への応用
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26870672
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
谷田 守 金沢医科大学, 医学部, 講師 (70512309)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自律神経 / レプチン / 糖代謝 / 肝臓 / 視床下部 / 細胞内シグナル伝達 / 糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、糖代謝調節作用をもつレプチンが肝臓及び膵臓を支配する自律神経に及ぼす効果について検討し、その作用経路に視床下部のシグナル伝達機構がどのような役割をもつか着眼し、レプチンによる糖代謝調節の意義を明確にすることを目的とした。 まず麻酔下ラットにレプチンを脳室内又は静脈内に投与すると、肝臓交感神経活動が濃度依存的に増え、弓状核へのレプチン微量投与でも増大した。またマウスでも同様にレプチン投与で肝臓交感神経活動が刺激され、レプチン受容体変異マウスであるdb/dbマウスにおいてはその作用が減弱した。従って、レプチンによる肝臓自律神経調節機序に視床下部のレプチン受容体カスケードの関与を認めた。 ラット又はマウスにレプチンを脳室内投与すると、投与後15分で視床下部のERK,Aktのリン酸化レベルが亢進したことから、レプチンが視床下部に作用して細胞内シグナル伝達経路を活性化させることがわかった。次に電気生理学実験で、PI3キナーゼ阻害剤であるLY294002をラット又はマウスの脳室内に事前投与するとレプチンによる肝臓交感神経活動促進効果が消失した。さらに遺伝子組換えマウスを用いた実験では、PI3キナーゼの触媒サブユニット(p100α)を欠損したマウスにレプチンを投与しても肝臓交感神経活動は上昇しなかった。従って、レプチンによる肝臓交感神経活動調節には視床下部弓状核でのPI3キナーゼ経路の関与している可能性を示唆した。 肝臓迷走神経活動への効果についても検討し、麻酔下ラットへのレプチン脳室内又は弓状核内への投与によって神経活動が同様に促進した。この作用には視床下部AMPキナーゼが関与することを認めた。従って、レプチンによる肝臓自律神経調節経路には、視床下部の分子経路(PI3キナーゼとAMPキナーゼ)が関与していることを新たに見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、レプチンが肝臓を膵臓を支配する自律神経系の脳内調節経路を明らかにすることを目的としている為、レプチンによる肝臓の自律神経調節経路に視床下部の細胞内シグナルカスケードや標的神経核を同定したことは、当初の目的に沿って研究を推進できている。従って研究が順調に進んでいると示唆される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、膵臓を支配する自律神経系へ及ぼすレプチン投与効果をin vivo電気生理実験で明らかにし、その作用メカニズムを解明することが当面の目的となる。膵臓を支配する自律神経系の同定は困難を極めることが予想されるが、計測後に電気刺激を行い、血中の血糖調節ホルモン濃度が変化するか否かチェックし、ラット又はマウスの膵臓自律神経系測定システムの構築を目指す。 次に、レプチンによる糖代謝調節における肝臓又は膵臓自律神経の役割を明確にする為に、外科的に肝臓又は膵臓自律神経を切除する動物を作製し、コントロールの偽手術動物でのレプチン投与による末梢臓器のグルコース取り込み反応を比較する。 さらにレプチン投与が糖尿病モデル動物の糖代謝を改善させる効果があることから(Endcrinology, 154(9):3067-3076, 2013)、糖尿病モデル動物であるストレプトゾトシン誘発性Ⅰ型糖尿病モデルラットやⅡ型糖尿病モデル(高脂肪食性肥満ラット、OLETFラット及びKK-Ayマウス)の肝臓及び膵臓自律神経活動へ及ぼすレプチン投与効果を検討する。
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Causes of Carryover |
実験計画において、電気生理学実験と生化学実験にわけて予算執行を考えていたが、電気生理実験が当初の予定よりスムーズに進行し、物品費の使用額が高額な生化学実験が少し遅れている傾向があった。従って、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験物品費として、ELISA測定キット、抗体、実験動物代を主な消耗品として計画している。旅費として、日本肥満学会、日本生理学会、北米神経科学会に執行することを計画している。
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Research Products
(18 results)
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[Journal Article] Atomoxetine reverses locomotor hyperactivity, impaired novel object recognition, and prepulse inhibition impairment in mice lacking pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide.2015
Author(s)
Shibasaki Y, Hayata-Takano A, Hazama K, Nakazawa T, Shintani N, Kasai A, Nagayasu K, Hashimoto R, Tanida M, Katayama T, Matsuzaki S, Yamada K, Taniike M, Onaka Y, Ago Y, Waschek JA, Koves K, Reglodi D, Tamas A, Matsuda T, Baba A, Hashimoto H.
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Journal Title
Neuroscience
Volume: 297
Pages: 95-104
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] L-Ornithine intake affects sympathetic nerve outflows and reduces body weight and food intake in rats.2015
Author(s)
Konishi Y, Koosaka Y, Maruyama R, Imanishi K, Kasahara K, Matsuda A, Akiduki S, Hishida Y, Kurata Y, Shibamoto T, Satomi J, Tanida M.
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Journal Title
Brain Research Bulletin
Volume: 111
Pages: 48-52
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Injection of Lactobacillus casei strain Shirota affects autonomic nerve activities in a tissue-specific manner, and regulates glucose and lipid metabolism in rats.2014
Author(s)
Tanida M, Imanishi K, Akashi H, Kurata Y, Chonan O, Naito E, Kunihiro S, Kawai M, Kato-Kataoka A, Shibamoto T.
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Journal Title
Journal of Diabetes Investigation
Volume: 5
Pages: 153-161
DOI
Peer Reviewed
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