2015 Fiscal Year Annual Research Report
批判的思考力育成の基盤をなす地理教育の理論と実践の解明
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26885048
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
広瀬 悠三 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (50739852)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 地理教育 / 世界市民教育 / 批判的思考力 / 道徳的人間形成 / 思考する / 良心 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)昨年度、地理教育が思考力の教化に有機的に寄与するということを明らかにしたが、さらに地理教育が道徳的人間形成につながることを解明した。すなわち、地理教育を通して教化された能力によって、「思考すること」が促されるようになるが、その思考は自らとの対話を求め、事物や事象を反省的に吟味することを要求することになる。この自己との対話は、現実の日常世界を生きる自己とは異なるもう一人の自己を出現せしめ、自己のあり方を考察することを可能にするようになる。ここにおいて、自己意識としての「良心」が現れうることを、カントや現代哲学者のアーレンとの論考を踏まえて明らかにした。また、ジオ・ケイパビリティの形成と倫理教育の結びつきをも考慮に入れることで、十分な批判的思考力の形成は、良心を伴う自己内対話としての思考までも形作るという意味で、地理教育は道徳的人間形成と密接に結びつくことを解明した。 (2)批判的思考力育成の基盤をなす地理教育の実践形態を、イギリスのサマーヒル・スクール(サフォーク州レイストン)の実践から検討を試みた。実際にサマーヒル・スクールを訪問し、授業やグループ・ミーティングを参与観察し、子どもたちと教師、また校長のゾーイ・レッドヘッド先生にインタビューし意見交換を行った。強制を徹底的に排除する同校の実践は、学園の小旅行や、様々な文化的背景をもっている学園の子どもたち自身の地理的差異に興味を抱かせることで、地理的認識と思考力を日常的な生活のレベルで教化することをめざしていた。とりわけこの学園の要にもなっているグループ・ミーティングは、地理的な差異に人と介してであれ深くかかわることのできる重要な営みとして非常に重視していることを見て取ることができた。批判的思考力の形成の形成をめざす地理教育が、民主的な対話に結びつく重要な要素を含んでいることを調査を通して明らかにすることができた。
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Research Progress Status |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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