2014 Fiscal Year Annual Research Report
「証言」という語りの形成と変容--長崎の原爆被害を事例として
Project/Area Number |
26885058
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
四條 知恵 長崎大学, 核兵器廃絶研究センター, 客員研究員 (80730556)
|
Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
|
Keywords | 長崎原爆 / 証言 / 歴史と語り |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、「長崎の証言の会」の資料調査およびデータベース化、長崎大学核兵器廃絶研究センターにおける学生による被爆者との交流の取り組みの参与観察を行った。 ①「長崎の証言の会」の資料調査およびデータベース化―「長崎の証言の会」事務所において、研究協力者の協力を得つつ、雑誌『長崎の証言』に寄せられた原稿タイトル及びページの入力を行った。収録されている原稿は、被爆体験証言、戦後の反核・平和運動をめぐる活動に関する寄稿文、詩や俳句を含む文学作品やほかの報告書や証言集、作品集からの転載に至るまで様々であるが、このうちの被爆体験証言については、判明したものは各被爆者の被爆地、被爆概要等の入力も行っている。 ②広島における証言活動の資料調査―長崎の証言の形成と変容を探求するにあたり、長崎の特徴を明確に提示するため、比較対象として同じく証言活動を盛んに行ってきた広島における証言活動の調査を行った。広島市立中央図書館や広島平和記念資料館の情報資料室において、財団法人広島平文化センターの年次報告書『平和の推進』、『平和と交流』あるいは年史などの1990年代半ばまでの資料の調査を行った。 ③長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)における学生と被爆者の交流の取り組みの参与観察―3月26日に被爆者を招いて、学生5人と被爆者との交流の場を設けた。この後、学生が自主的に被爆者を訪問するなど新たな交流が生まれている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
作業開始前は、分量の多さに作業が追いつくかが懸念された「長崎証言の会」の資料調査であるが、資料を熟知した研究協力者の協力を得ることができ、おおむね順調に進展している。『長崎の証言』は1968年以降、現在も発刊を継続しており、現時点で全71冊発行されているが、このうち約半分以上の4000項目の入力を終了することができた。現在のペースで進めば、27年度前半にはデータベース入力を終了できる見込みである。 広島の証言活動の調査についても、もともと研究代表者が広島の証言活動をサポートする仕事に携わっていたこともあり、事前に調査機関と調査資料の目星をつけることができ、短期間の調査ではあるが、効果的に必要な文献を入手することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、「長崎の証言の会」関係資料のデータベース入力化を進める予定である。現在進めている『長崎の証言』のデータ化終了後は、他の「長崎の証言の会」発行の関連文献の入力を進め、さらに資料保存も兼ねて会報のスキャニングに入る予定である。 「長崎の証言」関係者の聞き取り調査について、残念ながら、初期の会員で運動を中心的に引っ張って来られた方々の中には既に亡くなられた方が多く、お話を伺える方は若干名であることが判明した。当初予定していた座談会形式での聞き取りは困難であるが、個人のインタビュー調査に切り替えて実施を図りたい。現状としては、事務所に長期調査に伺う中で、関係者の積極的な協力が得られており、人数は少ないものの、存命の初期からの会員の連絡先を把握し、アクセスできる状況となっている。今後はインフォーマントの体調を見つつ、聞き取りを実施していきたい。
|
Remarks |
「被爆証言データベース化 長崎大研究員 団体誌の1000編超 秋にも完成」『毎日新聞』2015年1月27日
|
Research Products
(1 results)