2014 Fiscal Year Annual Research Report
複数の河川によって形成されるプリュームはどのように相互作用するのだろうか?
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26887025
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中田 聡史 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 助教 (70540871)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 沿岸海洋 / 数値シミュレーション / 河川プリューム / 河川間隔 / 河川流量 / 陸海連環 / 有色溶存有機物 / 海色衛星データ |
Outline of Annual Research Achievements |
大河川からの河川出水によって、岸を右手に見て流れるType1プリューム(Garvine, 2001)が沿岸海域で形成される。この現象については多くの研究成果があるが、複数の小河川から沿岸海域へ出水した河川水が相互作用しながら、どのようなプリュームを形成するのかは興味深い問題である。複数の小河川からの出水は、岸を”左手”にみて流れるType2プリュームを形成する場合がある。この現象は沿岸海洋生態系に多大な影響を与えていると考えられるが、北海道の噴火湾などでしか観測例がなく、数値シミュレーション研究でも扱った例はない。本年度では、数値シミュレーションに基づいて、多くの物理パラメータ、成層強度、海底斜面、河川数、河川流入量を考慮し、単一の小河川または複数の小河川が形成するType2プリュームの特徴を数値実験によって調べた。数値実験には海洋大循環モデルRIAMOMを使用し、実験領域は東西150 km×南北450 kmの矩形の海とした。西岸中央部付近に複数の河口を設置し、河川水が海へ出水される。上記の物理パラメータを変化させた実験1030ケースを実施した。単一の河川出水からのみでは既往の知見の通り、Type1プリュームが形成され、Type2プリュームの長さが短かった。しかし、河川を複数にして、ある物理パラメータで計算した180日後の計算結果をみると、長いType2プリュームが形成されていた。複数の小河川の間隔を長くするとType2プリュームの長さは短くなったが、適切な河川間隔にするとType2プリュームが長くなることがわかった。密度成層など他の物理パラメータを変化させてもType2プリュームの長さへの影響は小さいが、流量を大きくすると河川間隔が大きくてもType2プリュームが長くなることから、流量と河川間隔の関係は等価であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画によって、多ケース数値計算実行スクリプトを開発・運用し、大規模かつ効率的に数値実験を進めることができた。当初計画通りに数値実験を1000ケース以上効率的に実施することができた。計算結果の解析結果から、本研究で注目しているType2プリュームが形成される支配的条件や物理パラメータについては河川間隔や河川流量が大きく関与している可能性が高く、一方で密度成層や海底斜面はその関与が小さいことがわかってきた。このような解析結果に代表される様々な知見が加速度的に増えている。今後は、もっと多くの物理パラメータを用いて感度解析を実施することで、Type2プリュームを支配するパラメータがわかってくるだろう。また、当初の計画を前倒して海色衛星データの解析にも入っている。海色衛星データと県水産試験場や漁業関係者の協力体制のもと得られた現場観測データから、富山湾が複数小河川によるType2プリュームの卓越する沿岸海域であるという予備的な解析結果を得た。今年度はさらにType2プリュームが発生する内湾・沿岸域を効率的に発見する方法を検討していく。このように現段階では、本研究の最終目的にむけて着実に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
複数河川によるType2プリューム形成プロセスを調べるための数値実験を実施する。複数の河川出水によるType2プリューム形成に、さまざまな物理パラメータが与える影響を明らかにすることによって、Type2プリューム形成条件・プロセスに関する知見を得る。各物理パラメータ(コリオリパラメータや河川のハイドログラフ等)を変えた数値実験を2000ケース以上実施し、膨大な数の複数河川によるType2プリュームを分類、支配的な物理パラメータを同定する。 数値実験結果にもとづいて日本沿岸海域におけるType2プリュームの出現傾向を予想する。小河川によるType2プリュームが卓越する沿岸海域と推定できた噴火湾、大阪湾、富山湾の重点沿岸域において二級河川を含めた国内河川の流量や気象・海象・地形データを収集し、データ解析によって出現する河川プリュームのタイプを予想する。 GOCI海色衛星プロダクトの有色溶存有機物データにもとづいて沿岸海域のType2プリューム出現予想を実証・検証する。海色衛星データを用いてType2プリュームを抽出し、予想されたType2プリューム形成が正しいかどうかを検証する。河川プリュームが出現した海域に流入する複数河川の流量データにもとづいて、洪水時(融雪出水期や気象擾乱通過後)と平水時に分けて河川プリュームを整理し、それぞれの時期にどのようなType2プリュームが出現したのかを明らかにする。その結果、数値計算の妥当性がどの程度担保されているのか明らかにする。
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[Journal Article] The role of snowmelt runoff on the ocean environment and scallop production in Funka Bay, Japan2014
Author(s)
Nakada, S., K. Baba, M. Sato, M. Natsuike, Y. Ishikawa, T.Awaji, K. Koyamada, S. Saitoh
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Journal Title
Progress in Earth and Planetary Science
Volume: 1(1)
Pages: 1,25
DOI
Peer Reviewed / Open Access