2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26890022
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
アブドゥル アジズ 東海大学, 医学部, 奨励研究員 (50738789)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 幹細胞 / がん幹細胞 / 白血病 / 線維素溶解系 / 分子標的薬 / 完全寛解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度研究の遂行により、がん特異的な分子標的薬にPAI-1阻害剤を併用すると、著しい抗腫瘍効果を発揮することを見いだした。すなわち、白血病細胞を生着させたマウスに分子標的薬(イマチニブ)を連続投与する実験系において、分子標的薬の投与を中断すると、分子標的薬のみを投与した群は、再発し死亡する割合が顕著に増加した。一方、PAI-1阻害剤を併用投与した群では高い治療効果が確認された。PAI-1阻害剤併用群では、骨髄ニッチに存在する白血病細胞が効率よく排除されていた。 骨髄に生着した白血病細胞集団から白血病幹細胞を回収し、PAI-1分子の発現量を定量的PCRまたは免疫染色により解析したところ、白血病幹細胞は他の細胞分画に比べて高いPAI-1の発現が認められた。この発現は、ヒト白血病幹細胞においても確認された。さらに、PAI-1過剰発現型白血病細胞株は治療抵抗性が高く、その抵抗性はPAI-1阻害剤で解除された。これらのことから、がんの治療抵抗性獲得にPAI-1が重要な役割を果たしていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実験計画通り、PAI-1阻害剤の併用によって、白血病のさらなる治療効果の結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスCMLモデルを利用した解析 線溶系遺伝子欠損マウスを利用した解析:申請者はすでに PAI-1やtPA欠損マウスを導入しているので、前年度計画で施行した実験について、これら欠損マウスを利用して行うことによって、CML幹細胞の発生やCMLの発症あるいは治療抵抗性などにおける線溶系の役割を明確にする。特に、PAI-1遺伝子欠損マウスをレシピエントとして発症させた実験系については、がん幹細胞の細胞周期や治療効果について詳細な解析を行う。 ヒトCML検体を利用した解析 超免疫不全マウスであるNOGマウスは、正常ヒト細胞だけでなく、ヒト腫瘍細胞も効率よく生着するので、ヒトの病態を再現する優れたモデル実験系として汎用されている。そこで、ヒト白血病モデルでの治療効果の検討:ヒトCML患者検体をNOGマウスに移植してCMLを再現し、前年度計画においてマウス実験で行った検討課題をヒト白血病モデルマウスにおいても同様に行うことによって、PAI-1阻害剤の治療コンセプトがヒト白血病治療においても適用される事を明確にし、将来の臨床応用につなげる。
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