2014 Fiscal Year Annual Research Report
“乗り物を持たない遺伝子”としての細胞外プラスミドの機能解明
Project/Area Number |
26892024
|
Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
高橋 裕里香 富山県立大学, 工学部, 助教 (30732698)
|
Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
|
Keywords | 細胞外DNA / プラスミド / 富山湾 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではプラスミド研究・細胞外DNA研究の両分野において従来着目されてこなかった、実環境中にはどのような種類の細胞外プラスミドDNAが、どのぐらいの量存在しているのかを明らかにし、プラスミドを介した遺伝子の水平伝播に細胞外プラスミドがどの程度寄与しているのか解析することを目的とする。本研究計画の成否は細胞外プラスミドを精確に分離できるかどうかにかかっていると言っても過言ではないため、1年目である平成26(2014)年度は、分離法の検討に充てた。環境サンプルとしては、まずは海底堆積物を対象とした。この理由は、水圏は陸上の土壌圏に比べてDNA抽出が容易であり、海底堆積物中のDNA量(乾燥重量1 gあたり1 ng-31 μg)は海水・河川水中に比べて1000~10,000倍多く、半減期(6-10日)も他の環境に比べて長いことが報告されていたためである。既報の海底堆積物より細胞外DNAを抽出する方法に従ってDNAを抽出した後、エキソヌクレアーゼ処理によって直鎖状DNA・一本鎖DNAを分解して環状二本鎖DNAを残す方法を検討し、1回目のシーケンスデータを得た。しかし、前半の細胞外DNAの抽出において細胞内のDNAが多く混入してしまっていること、さらに抽出DNA中の夾雑物が想定以上に酵素反応を阻害し、後半のエキソヌクレアーゼ反応及びシーケンスサンプル調製での反応に支障をきたすことが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
細胞外DNAの分離方法の検討において、抽出DNA中の夾雑物が想定以上に酵素反応を阻害しシーケンスサンプル調製に支障をきたすこと、また既報の方法では細胞内のDNAの混入も多いことが判明した。海底堆積物から細胞外DNAを分離・抽出する方法については、1990年代後半~2000年代前半にかけて検討・改良が加えられており、その中でも2005年のCorinaldesiらの方法は、操作中の細胞の破裂・溶菌によって放出されたDNAの混入がないことが示されていたため、本研究のプロトコル検討の上で基盤情報になると信頼していたのだが、本研究での検討によって細菌の種類によっては溶菌が起こっていることが判明した。当初の計画からすると進捗が遅れていることは否めないが、これは従来の細胞外DNAに関する報告に警鐘を鳴らす重要な結果である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の遂行には、細胞外のDNAのみを回収し、シーケンスサンプルを調製して塩基配列データを得ることは、不可欠である。そのため、抽出過程の一部を見直し、純度を高めるための再精製方法を検討する。
|