2014 Fiscal Year Annual Research Report
胃癌腹水中エクソソームに対するゲノム解析に基づく胃癌腹膜播種治療の開発
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26893037
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
加野 将之 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (20456023)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | エクソソーム / 腹水 / 胃癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
当科では培養細胞を用いた基礎研究は食道癌細胞を用いて行ってきたため、食道癌培養細胞株を用いた検討を行った。機能解析を行い、エクソソームが細胞増殖に与える影響をcell proliferation assay(Cell Conting Kit-8, Dojindo)を用いて評価した。食道癌細胞株に対し、濃度依存的に細胞増殖を抑制することが判明した。現在、胃癌細胞株を用いた検討を継続中であり、良好な結果を得つつある。また、ヒト食道癌細胞株(TE2, T.Tn)を、エクソソームフリー血清(Exosome-depleted FBS Media Supplement, System Biosciences)を添加した培養液にて培養し、その上清より超遠心法を用いてエクソソームを抽出した。抽出したエクソソームを緑色色素(PKH67, Sigma-Aldrich)で染色した後に細胞株へ添加した。24時間後の蛍光顕微鏡下での観察では、細胞内へのエクソソーム取り込みがイメージング可能であった。また、胃癌細胞株(MKN-1、MKN-28、MKN-45、MKN-74、KATO-III、SH10-Tc)がヌードマウスへの腹腔内接種により腹膜播種モデルが成立することを確認した。食道癌細胞株(T.Tn、TE-2)のヌードマウス皮下腫瘍モデルの作成を確認した。In vivo modelの成立は確認されたので、エクソソームの体内挙動のイメージング、in vivoにおける、増殖、浸潤能に与える影響を今後解析予定である。 次に、当科にて-80℃ディープフリーザーで保存した食道癌、胃癌患者血清、血漿および胃癌患者腹水、胃癌手術時腹腔内洗浄液に関してエクソソーム抽出を試みた。胃癌手術時腹腔内洗浄液に対するエクソソーム抽出ならびに解析は、胃癌腹膜播種転移の機構をさぐる重要な一歩になると仮定し、同検体の手術時における採取を行い、症例数の増加に努めた。約30例の収集を行い、-80℃に分注、保存し使用可能となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養細胞を用いた検討を開始し、エクソソーム抽出が可能であることを確認した。一部機能解析も行いえた。エクソソームが持つ癌における機能、細胞間相互作用、腹膜播種腹腔ない環境を反映するもっとも簡便なモデルとしての培養細胞実験が進行しつつあり、さらなる知見が得られるものと考えている。よって、培養細胞系の実験は順調な進行状況といえる。 ヌードマウスでの食道癌ならびに胃癌、腹膜播種のモデルの成立が確認された。蛍光物質を導入した癌培養細胞を製作中であり、同様のモデルが作成することができれば、生体内でのエクソソームのイメージング、臓器間での相互作用が捉えられ、さらにそれらを可視化することが可能である。そういった研究の報告はまだ少数であり、上部消化管(胃癌、食道癌)では皆無に等しい。上部消化管の癌においてこの分野で世界の先陣をきる研究となる可能性があり、順調に実験系の開始が行われたと自己評価できる。 臨床検体体液中のエクソソームであるが、腹腔洗浄細胞診施行時の検体(腹腔洗浄液)中エクソソームに腹膜播種転移の重要な因子があるとの仮説のもとに、同検体よりエクソソームの抽出に時間を費やした。しかしながら、大変濃度が薄いことが予想され、検討に耐える程のエクソソームの収集は現段階では不可能である。今後さらに大量の検体よりエクソソームを収集したり、濃縮する方法を確立することによって、さらに進めていきたい。血清よりのエクソソーム抽出は順調であり、一部マイクロRNAの存在も確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
培養細胞系、in vivo動物実験系、臨床検体の検討をそれぞれ並行してさらなる重要な知見を得るべく進めていきたい。培養細胞系では、癌細胞どうしや、間質細胞(fibroblast等)における細胞間相互作用のイメージング、ならびに次世代シーケンサーやRT-PCRをもちいて内包遺伝子の検討、同定に努めたい。すなわち、内包遺伝子の同定、機能、相互作用の統合を目指したい。in vivo動物実験系では、現行の化学療法の治療実験における血清、腹水中のエクソソームの量的、質的(遺伝子)変化につき検討を加えるとともに、近い将来保険適用になると予想される腹腔内化学療法についても新規抗がん剤を含めた検討を行っていきたい。さらに、血中や腹腔内における細胞間相互作用をつきとめ、励起光イメージングにより、知見を深めさらなる診断、治療への展開を行っていきたい。 臨床検体における検討では、胃癌患者腹水の収集が滞っており、それを進めていきたい。当科では新規に-150℃ディープフリーザーを購入しており、それを用いてさらなる質の良い検体保存に努めたい。また、腹腔洗浄細胞診の検体(腹腔洗浄液)からのエクソソーム収集は現在のところ成功していないが、様々な抽出法(クロマトグラフィーを用いた方法など)を検討し、さらに大量抽出、濃縮を行うことにより、次世代シーケンサーによる網羅的解析に足りるエクソソーム抽出を行うことを目的としたい。次世代シーケンサーによって得られるエクソソーム中遺伝子の医学的意味は未知数であるが、新たな血清・腹水中バイオマーカーの発見、治療標的の発見につながる研究シーズになる可能性があり、機能的解析を含め、その後の検討を行っていきたい。
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