2014 Fiscal Year Annual Research Report
GC/MS/MSによる違法ドラッグ類異性体識別法の構築
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26893105
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
草野 麻衣子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60733574)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 分析化学 / 危険ドラッグ / 異性体識別方 / GC/MS/MS |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度では、ガスクロマトグラフィータンデム質量分析(GC/MS/MS)による危険ドラッグ、特に合成カンナビノイド類の位置異性体識別法の構築を行った。法規制および法中毒学的観点から、危険ドラッグ類の異性体識別法は不可欠である。初年度はナフトイルインドール骨格を有し、ナフタレン環の位置異性体を有する合成カンナビノイドJWH-081(メトキシ基)、JWH-210(エチル基)、JWH-398(塩素基)、およびJWH-122(メチル基)を対象成分とした。 JWH-081、JWH-210、JWH-122においては、シングルスキャンモードによる電子イオン化(EI)分析を行ったところ、2位、8位、および7位異性体は特徴的なEIマススペクトルを示し、容易に識別することができた。しかし、その他の異性体(指定されている4位体、3位体、5位体、6位体)はEI-マススペクトルが酷似しており、識別が困難であった。 これらの化合物について、EI-MS/MSを行った結果、位置異性体間で異なるプロダクトイオンスペクトルが観察されたことから、全ての位置異性体を識別できた。観察されたプロダクトイオンは、同じm/zのイオンであったとしても、官能基の位置の違いによって、イオンの形態や内部エネルギーが異なるものと考えられるため、EI-MS/MSによって位置異性体間で異なるプロダクトイオンスペクトルを示すものと考えられた。よって、GC/MS/MSは合成カンナビノイド類の異性体識別に有効な手法であることを示した。しかし一方で、JWH-398は、スキャンの時点で優先的に塩素基の離脱が起こるため、位置異性部位が消失し、結果的にMS/MSによる異性体の識別は難しいことも明らかとなった。塩素基を有する異性体の識別については、引き続き検討を行う予定である。 なお、初年度で得られた成果、国際法中毒学会にて発表し、すでに論文として成果を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の主たる目的はおおむね達成できた。ナフトイルインドール骨格を有する合成カンナビノイドを主とした対象成分とし、ナフタレン環にメトキシ基、アルキル基、塩素基など種類の異なる官能基を有する化合物とその位置異性体の識別を行った。塩素基を有する合成カンナビノイド以外は、①シングルスキャンモードによるEI-マススペクトルの取得を行った後、②フラグメンテーション解析を実施し、各フラグメントイオンのうち、異性部位に相当するイオンを決定した。異性部位に相当するイオンを決定した後、③異性部位のMS/MS条件の最適化を行い、対象成分とした合成カンナビノイド類の異性体識別法を構築した。 しかし、塩素基を有する合成カンナビノイド(JWH-398)においては、上記の分析法での異性体識別は困難だということが判明したので、引き続き今後の課題である。 これらの研究成果の一部については、国際学会で発表を行い、さらに論文投稿も行い2015年3月に公表された。 また、次年度の主たる目的である合成カンナビノイドの水酸化代謝物の水酸基の位置決定法の検討についても、すでに予備実験を開始しており、シングルスキャンモードおよびMS/MS分析で目標達成が可能であると予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の主たる目標である合成カンナビノイドの水酸化代謝物の水酸基の位置決定法を検討する。対象成分としては、すでに標準品が市販されているJWH-018のナフタレン環水酸化代謝物及びインドール水酸化代謝物を用いる。初年度同様に、EI-マススペクトルを取得し、フラグメンテーション解析を実施した後、異性部位に相当するイオンをプリカーサーイオンとして、MS/MSの最適化を行う。異なるCE及びプリカーサーイオンで得られたプロダクトイオンスペクトルから、水酸基の位置が決定できる条件を見出し、水酸基位置決定法を構築する。なお、水酸化代謝物の場合は、TMS誘導体化あるいはTFA誘導体化を用いることで、フラグメンテーションのパターンを変えることが可能であることから、誘導体化法を組み合わせた分析手法についても検討する。 水酸化位置決定法を構築した後、合成カンナビノイド(JWH-073、MAM-2201など)をラットに腹腔内投与し、24時間蓄尿した尿試料を用いて、水酸化代謝物の水酸基の位置決定を行う。 さらに初年度からの検討課題として異性部位に塩素基を有する危険ドラッグの異性体識別についても見当を行う。特にEI-MS/MSで識別が困難だった塩素紀を有する合成カンナビノイド類について、化学イオン化法(CI)または負イオン化学イオン化法(NCI)を用いたMS/MSによる識別を試みる。
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Research Products
(2 results)
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[Presentation] Positional isomer differentiation of naphthoylindole-based synthetic cannabinoids by GC-MS/MS2014
Author(s)
M.Kusano, K. Zaitsu, H. Nakayama, J. Nakajima, M. Yamanaka, T. Moriyasu, S. Matsuta, M. Katagi, H. Tsuchihashi, and A. Ishii
Organizer
52nd Annual Meeting of the International Association of Forensic Toxicologists
Place of Presentation
Pan Americano Hotel (Buenos Aires, Argentina)
Year and Date
2014-11-09 – 2014-11-13