2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26893130
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡田 能幸 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60739291)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 前立腺癌 / AES / Notch pathway |
Outline of Annual Research Achievements |
前立腺癌は欧米では死亡率が高く、本邦でも近年罹患率、死亡率共に上昇している。限局癌の場合は手術等によって根治が可能であるが、ひとたび転移を来すと標準治療のアンドロゲン除去療法の効果は限定的で、多くの症例で前立腺癌死は免れない。したがって前立腺癌を克服する為には、その転移機構の解明とそれに基づく新たな治療戦略の開発が必要不可欠である。本学遺伝薬理学教室では大腸癌においてAES がNotch シグナル伝達をブロックして転移を抑制する事を報告した(Sonoshita et al. Cancer Cell 2011)。さらに本研究室との共同研究によって、前立腺癌でも生検標本を用いた免疫染色上AES の発現低下は組織学的悪性度との間に有意な相関を示すことが明らかとなった。さらにOncomine のデータベースを用いた解析からも、前立腺癌の転移症例ではAES 発現が低下している事が確認された。以上をふまえて、AES が前立腺癌の悪性化を抑制するという仮説を立て、その分子機構の解明を通じて前立腺癌の転移を標的とした新たな治療戦略を確立することが本研究の目的である。本研究ではAES の増殖・転移抑制機能を検証するために、以下の計画で研究を進めた。 ①前立腺癌細胞株を用いて、AES の発現を変化させる事でその増殖能や転移浸潤能の変化を検証する(in culture)。②上記のAES の発現を変化させた細胞株を用いて、免疫不活化マウスに移植を行いその転移能の変化を検証する。またAES の下流にあるターゲットの解析を行う。(in vivo)。③前立腺上皮細胞特異的なPten ノックアウトに基づく前立腺癌マウスモデルを用いて、さらにAesを複合的にノックアウトする事で、腫瘍発生や進展に与える影響を解析しAes の前立腺癌における機能を検証する。④治療薬としてAES ペプチドを合成し、その増殖・転移抑制効果を検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前立腺癌細胞株にAESを強制発現させたり、ノックアウトさせて行った解析では、AESはアンドロゲンレセプター(AR)依存性の細胞株ではその増殖と浸潤を抑制し、AR不応性の細胞株では増殖には影響を与えず、浸潤を抑制する事が判明した。 また左心室注入による骨転移以外の転移モデルでもAESが転移抑制機能を持つかどうかを検証するために、前立腺にPC3細胞を注入するorthotopic transplantationを施行したところ、AESを強制発現した細胞群で有意にリンパ節転移が減少した。
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Strategy for Future Research Activity |
前立腺上皮特異的にPten遺伝子を欠損させたPtenflox/floxノックアウトマウスに、さらにAes遺伝子を欠損させたAesflox/flox Ptenflox/floxノックアウトマウスを作成し、前立腺腫瘍の悪性化(増殖・浸潤・転移)が促進されるかどうかを検討する。現在マウスは作成できてきているので、HE染色による形態観察や免疫組織染色による細胞間及び細胞・細胞外基質接着因子、細胞外基質分解酵素、細胞周期関連因子等の発現解析を進めて行っている段階である。
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