1986 Fiscal Year Annual Research Report
欧米史上における「宗教意識・祝祭と民衆生活」に関する総合研究
Project/Area Number |
60301053
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
瀬原 義生 立命館大, 文学部, 教授 (30066534)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮沢 正典 同志社女子大学, 教授 (40125117)
永井 三明 同志社大学, 文学部, 教授 (60066058)
井上 雅夫 同志社大学, 文学部, 教授 (50097854)
浅香 正 同志社大学, 文学部, 教授 (70066059)
大戸 千之 立命館大学, 文学部, 教授 (30066708)
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Keywords | 宗教意識 / 祝祭 / 民衆生活 / キリスト教会 / 魔女裁判 / アメリカ黒人奴隷 |
Research Abstract |
前年度の個別的基礎的研究の成果をふまえて、本年度は民衆の宗教意識ないし宗教的祝祭と民衆の日常生活のリズムとの関連性、さらに民衆運動のとかかわりなど、宗教と社会生活のかかわりの側面を総合的に究明することに重点をおき、相当な成果をあげた。いまその知見の一端をしるす。 たとえば古代ローマ帝国内においては、ミトラ信仰が広汎に流布したが、その信仰の中心的担い手は裕福な東方系の商人やローマ軍団の正規兵たちであり、彼らの移動にともなってミトラ信仰が普及するにいたったことが明らかになった。それは同時に、近い将来におけるキリスト教の伝播の関係を解明する糸口につらなるものと考えられる。イタリア・ルネサンス期については、民衆の国家観が分析された。民衆は国家、とくにフィレンツェでは共和政体を「神から与えられたもの」と考え、それらを神聖なものとして受け容れ、旧い政体を墨守しようとし、生れつつあった近代政治思想といちぢるしい対照を示している点が指摘された。近代イギリスでは、当時の民間信仰において重要な位置を占める魔術、そして魔女裁判を研究対象とし、かつての村落共同体が近代化し、相互扶助組織が解体したとき、近代化から疎外された老人、寡婦などが毛嫌いされ、果ては魔女として犠性に供されるにいたる過程が追求された。アメリカについては、植民地時代から建国期にかけてキリスト教が植民地人の活動の基礎的意識てして働き、黒人奴隷のキリスト教への参入を拒否する人種主義的宗教へと硬化する過程、他方、アメリカ黒人のあいだには、土着化した独自のキリスト教の普及がみられる点が解明された。 今後はこれらの個別研究をさらに深めるとともに、これらを比較総合的に考察し、一般理論へと昇化をはかりたい。
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[Publications] 瀬原義生: 立命館史学. 第7号. 1-36 (1986)
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[Publications] 瀬原義生: 立命館文学. 500号. 240-270 (1987)
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[Publications] 大戸千之: 立命館文学. 494号. 60-85 (1986)
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[Publications] 末川清,望田・末川共著: 西洋の歴史(近・現代編)(ミネルヴァ書房). 150-165 (1987)
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[Publications] 長田豊臣: アメリカ史ゼミナール(世界思想社). 165-180 (1987)
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[Publications] 西出敬一,西出・岡田共著: 北海道と少数民族(札幌学院大学刊). 1-59 (1986)
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[Publications] 池本幸三: "近代奴隷制社会の史的展開" ミネルヴァ書房, 433 (1987)
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[Publications] 長田豊臣,大下尚一,ガットマン著: "金ぴか時代のアメリカ" 平凡社, 400 (1986)