1986 Fiscal Year Annual Research Report
時間をコントロールする遺伝子の構造と作用機構の研究
Project/Area Number |
60440001
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
柳澤 嘉一郎 筑大, 生物科学系, 教授 (60015899)
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Keywords | 細胞性粘菌 / 下等真核微生物 / 形質転換 / ベクターの開発 / 時間の遺伝子 / 遺伝子の導入 |
Research Abstract |
細胞性粘菌は土壊性アメーバーで発生期に入ると細胞集合体を形成し、子実体をつくる。発生時間は22℃で24時間で、この時間は遺伝子により支配されている。当研究室では発生時間が正常なものの約2/3、16時間で終了する突然変異体を多数分離し、遺伝解析を行った結果、発生時間をコントロールする遺伝子は劣性単一遺伝子であることが示された。(発表済)。 時間をコントロールする遺伝子rdeの構造とその作用機作を調べるため、まず細胞性粘菌でその宿主ベクター系を確立しようとして、野外から新たに採取した系統株を調べ、その一系統株からプラスミドpGFlを発見、単離した(発表済)。このプラスミドを改良し粘菌用シャトルベクターとすることを試みてきたが、現在まだベクターとして利用できる段階に至っていない。 一方、カリフォルニア大学のFirtel一派はわれわれに先んじて粘菌用ベクターBIOSXの開発に成功した。このため、このベクターを入手し、これに正常なrde遺伝子をつないで突然変異体に導入して形質転換体をうることを試みた。しかし、BIOSXの細胞への導入率は極めて低く、この導入率をまず実験目的に沿ったレベルまで引き上げることが必要とされた。このため、前年度から今年度にかけて、塩化カルシュウム細胞処理法の改良,細胞のグリセロール処理,キャリアーDNAの添加等,導入法の改善を行い、その結果、Firtilらの発表結果の約10〜20倍の高率で細胞内にDNAを導入することに成功した。しかし、実験効率を上げるためにはさらに頻度を100倍にあげることが必要で、現在、努力している。同時に、現在、正常型の細胞のDNAを種々の制限酵素で切断してBIOSXに組込んだのちに突然変異体に導入する実験を行っているが、まだ形質転換体はえられていない。こうした実験には多大な時間と労力を要し、さらにチャンスを伴うが、成功をめざして現在、鋭意努力している。
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