1985 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
60440083
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
平井 五郎 日本大学, 歯, 教授 (80013845)
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Keywords | 顎嚢胞 / 核DNA量 / 顕徴分光光度計 / 下顎頭軟骨層 / 骨端軟骨 |
Research Abstract |
歯周組織の良性腫瘍である顎嚢胞をWHOの分類に従い、炎症性の歯根嚢胞と、発生学的嚢胞である角化嚢胞と含歯性嚢胞とに分け、それぞれの組織学的特徴と上皮基底層細胞のDNA含有量との関係を検討した。歯根嚢胞では炎症の程度と上皮脚の発達程度とは正比例の関係にあることが既に報告されているが、発生学的嚢胞である角化嚢胞と含歯性嚢胞においても炎症の程度と上皮脚の発達程度とを分割表を作成して検討した結果、いずれも炎症が高度になるほど上皮脚が発達することが明らかとなった。次に、嚢胞内面を覆う上皮の基底細胞の核をFEULGEN反応を用いて染色し、染色濃度を顕徴分光光度計を用いて波長560nmで定量した。標本に認められるリンパ球のDNA含有量を標準としてこれを2Nとすると、上皮の基底層の細胞の平均核DNA量は、歯根嚢胞では2.5N、角化嚢胞では2.8N、含歯性嚢胞では2.6Nであった。DNA含有量は上皮基底層の細胞分裂活性を示すものであり、上皮脚の発達が高度であるほど核DNA量が増加する傾向が認められた。角化嚢胞のうち1例においては、その上皮基底層の細胞の核DNA量が3.6Nと高い価を示した。この嚢胞は手術後の再発例であって、X線像では多房性で境界が不規則であり、組織像では上皮基底層の細胞の核が膨大してFEULGEN反応による染色性が異常に強くなっていた。このことはこの嚢胞は再発の可能性が高く今後の経過観察に十分な注意を払う必要があることを示すと考えられる。 ミニブタおよびラットの下顎頭、ラット脛骨の骨端軟骨をFEULGEN反応で染色し、軟骨層を増殖層、成熟層、肥大層、および予備石灰化層に分けて観察すると、通常は死滅して骨に変ると考えられている肥大層の細胞にDNA活性の高い細胞を見出したので、蛍光色素による染色およびDNA定量により検討することを考慮中である。
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