Research Abstract |
マグネシウムを含めた生体微量元素の適正摂取量を推定する為に実態調査動物実験,臨床試験の各面から研究を進めた. 実態調査では大学ボート部選手8名を対象として栄養調査,血液生化学検査,疲労度アンケート調査を実施した. 食事調査によるとCa,P,Fe,K,Mg,Zn,Mn,Cuなどのミネラル摂取量は低かった. そこで, 実際にエネルギー所要量を設定し, 三大栄養素の摂取比率の是正,ビタミン,ミネラル類の補給などの栄養改善管理を一週間実施した. これによりミネラル摂取量はCa:2倍,P:1, 5倍,Fe:1, 1倍,K:1, 3倍,Mg:1, 2倍,Zn:1, 2倍,Mn:1, 1倍,Cu:1, 1倍,エネルギー:1, 3倍の摂取増になる. 血液検査ではCa濃度は有意に上昇し, 有意差は無かったが血液中MgとFe濃度は上昇した. 又,疲労度アンケート調査による疲労自覚症状の個数は有意に低下した. この結果は微量元素栄養を含めて大学スポーツ選手は栄養摂取量が十分では無く,スポーツにおける栄養管理の重要性を示唆するものである. 動物実験ではMg欠乏にした母ラット,その母乳を飲んで育った仔ラット,および成長期のラットにおける組織中のミネラルの変動について検討を加えた. 授乳中の母ラットでは授乳していない成長期のラットに比較してMg欠乏の症候である骨中のMg低下,腎臓中のCaの上昇がより著明に出現し, 授乳がMg欠乏を促進することが明らかになった. 一方, 仔ラットでは骨中のMgの低下は生じるが, 腎臓中のCaの上昇はなく,母親によってMg欠乏が緩和される機構が存在することが示唆される. 臨床的な研究では病院に入院中の分裂病患者にZnを大量に含有するかき肉エキスを投与した. その結果,意欲の低下,不機嫌,易刺激性,感情の流通性と共感性の乏しさ,言語交流と内省力の欠乏,知的能力の低下,幻覚と二次妄想などの軽い陽性症状が改善した. 陳旧例では血清中Zn値が低く, 分裂病ではZnの全般的な欠乏が存在すると考えられた.
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