1986 Fiscal Year Annual Research Report
赤色腫株化細胞のクローンを用いての細胞分化機構の研究
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60540471
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松本 二郎 慶応大, 法学部, 教授 (80051241)
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Keywords | キンギョ赤色腫細胞 / 分化誘導 / 多能分化 / S-100蛋白 / 膜受容器 / 色素反応 / 機能分化と増殖能 / アクチンisoform |
Research Abstract |
キンギョ赤色腫株化細胞は人為的な分化誘導により神経冠起源の正常細胞が示す多様な表現形質を発現する。この多能分化の機構解析が目的である。昭和61年度に実施された研究の成果は次の三項目に要約される。 (1)キンギョ赤色腫(GEM81株)から分化誘導によって得られるクローンにはよく分枝した細胞突起をもつ神経細胞様の形状を示すものが発現する。このクローンを神経細胞の標識の一つS-100蛋白質に対する抗体を用い免疫細胞化学的に検索すると顕著な交叉反応を呈し、神経細胞由来の形質を発現していることが示された。神経性形質を発現するクローンと共通の母株から由来する幹細胞型クローンやプテリン色素合成等色素形質を発現しているクローンではS-100蛋白質に対する抗体への反応性は極めて低く分化誘導は発現可能な形質から特定の形質を選択的に強く発現するものと推測された。 (2)キンギョ赤色腫株化細胞から誘導されるメラニン形成性クローンには色素反応を示すものと示さないものとが存在するが、これら二型のクローンを分離し神経伝達物質(エピネフィリン)及びホルモン(MCH,MSH,メラトニン)に対する膜受容器の組成を検索すると多様な組合せが存在することが示された。また、メラニン形成性クローンでは色素反応を示すものは示さないものに比べ増殖能が著るしく低く、膜受容器の形成・稼動を含む生理学的機能の発現は細胞増殖と逆相関の関係が存在することが示された。 (3)キンギョ赤色腫株化細胞の幹細胞型クローンから色素反応を示すメラニン形成性細胞が分化してくる過程では細胞が含有するアクチンisoformは前者がβ型一型であるのに対し後者はβ及びγを基軸とする多型に変換していることが示された。アクチンは正常黒色素細胞でもisoform多型を示し、線維芽細胞ではβ型一型であるので色素反応の如き細胞運動の発現にはisoform多型の形成が連係すると推測された。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] T.Akiyama;J.Matsumoto;T.Ishikawa;G.Eguchi: Differentiation. 33. 34-44 (1986)
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[Publications] J.Matsumoto;T.Akiyama;T.Ishikawa: Journal of Investigative Dermatology. 87. 391 (1986)
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[Publications] T.Ishikawa;Prince Masahito;N.Nemoto;J.Matsumoto;A.Shima: Journal of National Cancer Institute. 77. 521-528 (1986)
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[Publications] N.Nemoto;K.Kodama;A.Tazawa;J.Matsumoto;Prince Masahito;T.Ishikawa: Journal of Cancer Research & Clinical Oncology. (1987)
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[Publications] T.Akiyama;J.Matsumoto;T.T.Tchen: Cell Differentiation. (1987)
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[Publications] A.Oikawa;H.Saeki;T.Akiyama;J.Matsumoto: Pigment Cell Research. (1987)
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[Publications] M.Masada;J.Matsumoto;M.Akino: "Chemistry and Biology of Pteridines 1986 Title:Pteridine biosynthesis and manifestation of pigment phenotypes in normal and neoplastic cells of goldfish in vitro" Walter de Gruyter & Co.,Berlin-New York, 1050 (1986)