1986 Fiscal Year Annual Research Report
時間分解顕微螢光光度計の開発とそれを用いた細胞膜の動的構造の研究
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60880029
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大西 俊一 京大, 理学部, 教授 (00025272)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早川 毅 浜松ホトニクス株式会社, 研究部, 主任部員
楠見 明弘 京都大学, 理学部, 助手 (50169992)
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Keywords | 時間分解法 / 顕微分光 / 蛍光 / 細胞膜 / 膜蛋白質 / パルスレーザー / ストリークカメラ |
Research Abstract |
時間分解顕微蛍光光度計を開発し、それを用いて単一細胞の細胞膜の動的構造を研究するための予備的結果を得た。本装置の一大特長は蛍光顕微鏡下で観察される興味ある部位にレーザー光を照射し(直径0.5〜1μm)、その領域において時間分解蛍光分光法を用いることによって分子レベルでの情報を収集するところにある。開発した装置は現在のところ、50ピコ秒の時間分解能、1μmの空間分解能、10nm程度の波長分解能を有する。時間分解能はストリークカメラによって、空間分解能は顕微鏡光学系によって、波長分解能はマルチクロメータ又はバンドパスフィルターによって得られる。4MHzの繰り返し周波数で8ピコ秒程度の半値幅をもつ365nmの光パルス列を発生するレーザーシステムの使用は本機の開発には不可欠なものであった。 本装置で蛍光減衰曲線を測定するのに必要な最小の分子数は蛍光分子及びその環境にもよるがナフタリン系,キサンチン系の色素でおよそ【10^5】個程度である。この限界は、スライドグラス,カバーグラス,対物レンズ,フィルター等から発生する蛍光によるバックグラウンドによって与えられており、これらを減少される事ができれば一分間程度の積算で【10^4】個分子からの時間分解測定が可能である。単一リポソームの中での直径1.6μmのスポットの測定ではホストの脂質に対して1/1000モル量存在するナフタリン系色素の蛍光減衰を10秒間の積算時間で得、この特性時間は通常のキュベット中で時間相関単一光子測定法を用いて得たものと完全に一致した。又ヒト赤血球ゴースト膜中のアニオンチャンネル蛋白質のバンド3にフルオレセインを特異的に一ケ所(リジン基)結合し、2.5μmのスポット(約2×【10^5】分子のバンド3)に於て50秒間の積算を行ない、1.66ナノ秒と4.42ナノ秒の2成分減衰が良好なS/N比で観測された。
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