1986 Fiscal Year Annual Research Report
尺八において曲種・演奏者に応じた音色性能を得る構造設計法の開発
Project/Area Number |
60890013
|
Research Institution | 九州芸術工科大学 |
Principal Investigator |
安藤 由典 九芸工大, 芸術工学部, 教授 (70038959)
|
Keywords | 管楽器 / 木管楽器 / 尺八 |
Research Abstract |
交付申請書に記載した3項目の研究実施計画〔1.歌口端の音響量測定および計算、2.寸法精度の検討、3.尺八の個性・品質と発生音物理量および管音響量の各特性パタンとの相関記述〕の各々について得られた知見はつぎの通りである。(1)60年度の指孔に続いて、歌口端に関する補正長とエネルギー損失とを求める実験式を定めた。それによると概略値は、前者が3.3〜4.7cm,後者が10〜20×【10^4】(MKS)である。(2)自然の竹に漆塗りを施こして内面を仕上げる尺八管の製作において、寸法の仕上がり誤差を全体にわたって小さく保つことは極めて難しく、差し支えない限り要求精度を下げたい。そこで管の各部、指孔などの寸法の微小変化の共鳴周波数特性に与える影響をシミュレーション計算で求めこれより必要な寸法精度を定めたものである。その結果によると、最も高い精度が必要な部分は管の中央約1/3の部分の内径で、周一と見なしうる性能を得るための許容誤差は約0.1mmである。(3)これまでに管の音響量とこれより推定される発生音物理量との関係を、現代尺八2例、初期芸能用尺八1例、および円筒管,円錐管について求めた。これを古典本曲主体の演奏家と民謡主体の演奏家の間における求める音色の相違に照らした結果、古典本曲演奏用に望ましい内径パタンは第一に初期芸能用尺八であり、第二に現代の代表的製作者による一級品のパタンであること、民謡用には、現代の普及用木工尺八がよいが、円錐管を若千変形した管形も匹敵する性能が得られることなどが明らかになった。この他、上記の研究過程で、管の一部の内径を滑らかに変化することにより、音律を効率的かつ正確に所要の音律に合わせ得ることを発見した。この方法は尺八製作の現場で簡単に音律調整を行う場合に極めて有用であり、本研究で得られた特筆すべき重要な知見であると考える。
|
-
[Publications] 安藤由典: 日本音響学会誌. 42. 510-518 (1986)
-
[Publications] 安藤由典: 音楽学. (1987)
-
[Publications] 安藤由典: 日本音響学会誌. (1987)
-
[Publications] 安藤由典: 日本音響学会講演論文集. (1987)
-
[Publications] 安藤由典: 日本音響学会講演論文集. (1987)
-
[Publications] 安藤由典: "音楽と音楽学(服部幸三先生還暦記念論文集)(第一論文「尺八の構造について」を執筆)" 音楽之友社, 767 (1986)