Research Abstract |
わが国の都市化地域において現在進行としている都市化が農業・農村に及ぼしている影響を調べ, その変貌の様相を類型区分して, 各類型ごとの土地利用転換や農村総合整備の方向・方法を, 農業生産のみならず農業のもつ緑地・生態機能にも留意し, 農村と都市との調和に関する理念にまでさかのぼって, 考究することがこの研究の課題である. 研究の第2年度であり今年度は, 昨年度の既存資料, 文献による理論的, 実証的研究, 統計資料の解析による研究, 近畿圏の都市化市町における事例的・予備的研究に続いて, 統計資料の解析による研究と首都圏,近畿圏,および地方都市近郊の市町での実態的研究にウェイトをおいた. すなわち, 首都圏(東京都と近隣県)と近畿圏(大阪府と近隣府県)で土地利用転換の実態と要因に関する統計的分析をすすめるとともに, 東京都練馬区, 倉敷市,松山市において各50戸づつの農家調査を実施し, 農家経済,農業経営,農民意識,農民意向などに関する分析をおこなった. 農家調査の分析から注目すべき数点を示せば, 以下のとおりである. 1.自己保有・自己転用,売却の意向が強いために,農地の貸借型流動化は今後,すすまないだろう. 2.いたずら,農薬散布の困難性,農業機械利用の制約(騒音のため),日照不足,コミェ・ケーションの不安定化などスプロールによる農業生産上の障害が多い. 3.練馬区では農業継続希望農家が多いが, 倉敷市,松山市では農業縮小・脱農希望農家が多い. 4.都市化地域の農業生産と農業環境の確保のためには土地分級による土地利用計画の策定と,行政,農協による強力なリードが重要である. 6.練馬区では農村・都市両サイドから都市域での農業・農地の保全のためにユニークな施策が実施されているが,地方都市域ではこれがみられない. これらの分析結果は別途, 中間報告書としてとりまとめられている.
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