Research Abstract |
解離性大動脈瘤はその発生,進展の機序が必ずしも明らかでなく,またその病態,病像も複雑である. 臨床的立場から見ても,型や病期に応じて適切な治療方針,治療方法を選択する必要があり,病理学的,生理学的の両側面からの基礎的研究を基盤に,内科,放射線科,外科を含めた集学的な臨床研究が重要であり,これに対して本研究班で研究が継続された. 基礎的研究として井上は,解離壁の治療過程を実験的解離犬で検討し,壁の破断応力,ハイドロキシプロリン含量は解離作成後3日で最低となり,組織学的には1カ月で恢復することを示し,寺本は,実験的に上行大動脈解離を作成し,解離壁には二次的虚血変化の続くこと,この現象は虚血と血行力学因子が関与することを示した. 高宮,稲垣は,本症診断におけるMRIの有用性を詳細に示し,とくに前者は,本検査におけるシネ・モードが極めて診断度,病像の解読度の高いことを示した. 内科的治療について,中村は33例の検討から,心タンポナーデ発症の因子として,上行大動脈起始部の内膜フラップの存在,径の増大,心嚢腔内貯瘤液の増加を超音波断層で認めたこと,金沢は58例についてその予後を降圧剤の選択を中心に報告した. 外科的治療について,上野は,急性脳阻血に対する手術適応について,小松はA型手術において脳障碍防止のために低体温下循環停止法の有用性を述ベ,宮本は下行大動脈遮断時の脊髄障碍発生防止としてSEPと脳脊髄圧モニターの有用性を示した. 橋本もSEPモニターの有用性を示し,とくに左鎖骨下動脈遮断の影響を検討した. 中村,江口,田辺,中島は,急性期,慢性期を通しての外科治療成績について報告し,治療成績向上のための要因を解析した.
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