1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61410009
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
吉岡 康暢 国立歴史民俗博物館, 考古研究部, 教授 (60183696)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 正敏 国立歴史民俗博物館, 考古研究部, 助教授 (00185646)
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Keywords | 東日本 / 福井県 / 中世窯業 / 越前窯(焼) / 16世紀〜17世紀 / 陶磁器生産 / 操業単位 |
Research Abstract |
昭和61・62年度に発掘調査を実施した、越前窯岳ノ谷小群(福井県織田町平等所在)の成果をふまえ、(1)遺構図・分布図類の整理、(2)出土遺物の分類・集計、(3)他地域の中世末期窯跡及び遺物の実見を行った。 (1)煙道部と焼成・焚口部の主要部分を精査した、岳ノ谷1号窯を中心に窯体構造を検討した結果、岳ノ谷小群を構成する他の4基も大略同一の規模・構造を有し、小群は村落単位の労働力編成によって、きわめて大規模かつ組織的に管理されていたと考えられる。ここに抽出された生産ユニットと約50基にのぼる窯跡群のグルーピングは、戦国〜江戸前期の窯業生産体制の解明に、有効な指針となろう。(2)陶片の窯別・床面別整理によって、従来不分明であった16〜17世紀前半代の越前陶器(甕・壺・片口鉢主体)の推移に、明確な編年基準を提示できた。さらに、朝倉氏一乗谷遺跡の越前陶器との対比により、大型窖窯への転換が16世紀前半代を下らぬことが確認された意義は大きい。なお、岳ノ谷1号窯で、窯内の残留遺物ないし焼台の配置から、具体的な窖詰法と焼成量が割り出されたことも、当該期の生産力測定の一指標となる。(3)戦国期における中世陶器窯の地域的展開は、備前・常滑などいわゆる"六古窯"の発掘が実施されていない現況で、厳密な比較研究は難しい。しかし、今次の越前窯の調査によって、熱効率の高い、量産に適した窯構造という原理的な面で一致しつつも、越前窯独自の窯構造を案出していたことが明らかになった。これによって、戦国期の窯業生産が、窯跡の特定地区への集中、集約的な生産組織への改組に加え、廉価な製品の量産と品質向上の同時的達成という時代的要請に即応した、技術革新の実態が、始めて実証された。
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