1987 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61410010
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Research Institution | Kyoto National Museum |
Principal Investigator |
森 郁夫 京都国立博物館, 学芸課, 考古室長 (50000477)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下坂 守 京都国立博物館, 学芸課, 主任研究官 (10150038)
難波田 徹 京都国立博物館, 京都文化資料研究センター, 資料調査研究室長 (90000364)
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Keywords | 都城遺跡 / 平安京 / 平城京 / 難波京 / 条坊 / 大路 / 小路 / 造営尺 |
Research Abstract |
経過作業として,昭和61年度に引き続き平安京域の地形図(千分の1大梯尺)に発掘調査遺構の記入作業を行なった. 昭和61年度には平安宮城及び右京二・三条地域を主たる対象地とした. 本年度も,昭和61年度の地域と基本的には変らないが,昭和61年度に新たに作製した地域を加えて作業を続行した. 平安京城は,いうまでもなく1200年の長きにわたって都市としての機能を保ってきた所であり,平安京としての遺構,とりわけ平安時代の遺構の遺存状況は良好とは言えない. しかし,前代の都城遺跡である平城京,難波京などの調査成果を参考にすることによって条坊の復原作業はかなり有効となった. たとえば,条坊を区画する大路・小路の幅が従来考えられていたような, 統一されたものではなくかなりばらつきをもつものであることが明らかになってきた. したがって,条坊を区画する道路及びその側溝の見きわめに重点をおかねばならない. また,条坊設定時における造営尺が前代とは若干異なっていること,すなわち, 造営尺は年を経るにしたがって僅かずつ間延びする傾向にあることも明らかになってきた. 平城京の造営に際しては唐小尺が用いられているのであるが,8世紀前半においては1尺29,6cmであったものが, 8世紀末葉には1尺29,9cmに近くなるのである. 1尺あたりの誤差は僅かなものであっても,条坊の設定に際してその誤差を何らかの形で修正しなければ, 造営工事の正確さが失われる. おそらく平安京の造営に際しても唐小尺が使われたものと考られるが,『延喜式』「左右京職 京程」に示された距離と, 発掘調査によって検出した遺構との誤差を明らかにすることも可能であろう. ただし, 近年の研究によれば造営尺は測地用と建造物用とでは,唐大尺と小尺という別種の尺度が用いられた可能性が考えられている. 平安京造営に際して, 造営尺がどのような状況であったのか, 今後に残された重要な課題である.
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