1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61410010
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Research Institution | Kyoto National Museum |
Principal Investigator |
森 郁夫 京都国立博物館, 学芸課, 考古室長 (50000477)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
難波 洋三 京都国立博物館, 学芸課, 文部技官 (70189223)
下坂 守 京都国立博物館, 学芸課, 主任研究官 (10150038)
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Keywords | 都城 / 平安京 / 平城京 / 条坊 / 延喜式 / 造営尺 |
Research Abstract |
3年計画の最終年度として、千分の1大梯尺地形図1面を作製した。過去において作製したものを含め計19面を作製したことになるが、平安京全域をカバーするには48面を必要とするので、未だその半ばには達していない。しかし、京都市埋蔵文化財研究所を中心として進められている発掘調査によって得られた条坊関係遺構を地形図上に記入したり、あるいは得られた座標値によって『延喜式』「京程」に示された平安京条坊との比較検討を行うことができた。たとえば右京二坊での一条大路北側溝心と、左京二坊での二条大路北側溝心との間は、南北単純距離として『延喜式』では4724尺(1407.75m),造営尺1尺=0.298m),実測値1393.20mとなり、その誤差は15.77mである。これは誤差の大きな例である。誤差値の少ない例としては、右京二坊での三条大路南築地心と左京一坊での四条大路北築地心をあげることができ、両者間1720尺(512.56m)で実測値512.30mとの誤差は僅かに0.26mである。計算結果を概観すると、復原値の誤差がそれぞれ2地点間の距離の長短にかかわりなく見られることに気づかれる。また、南北間と東西間とでは計測地点の数に差があるものの、東西間の復原値を実測値が越える例がほとんどであり、これに対して南北間においては相半ばしている。これは、使用した物指に多少の誤差をもっていたものか、条坊設定作業中における誤差の修正作業の誤りがあらわれたものと考えられる。また、条坊設定の際に生じた誤差はそれぞれの地域でさまざまであるが、おそらく技術面に加えて地形上の制約も誤差を生じる要因のひとつであったにちがいない。平安京域は、奈良盆地と同様地溝盆地であり、一見単調に見える地形も水処理に困難な面があり、条坊設定には随所に困難が存在したのである。したがって、遷都当初には条坊は完成せず、西南部の谷の入りこんでいる地域においては、平安時代後期になって道路が設けられている。
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