1986 Fiscal Year Annual Research Report
気相反応中間体の動的挙動-レーザー誘起共鳴蛍光・位相差法による研究
Project/Area Number |
61430001
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 伸 東京工大, 原子炉工学研究所, 教授 (30016042)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅本 宏信 東京工業大学, 理学部, 助手 (80167288)
綱島 滋 東京工業大学, 理学部, 教授 (20016108)
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Keywords | エキシマレーザー / 波長可変色素レーザー / レーザー誘起蛍光 / 初期状態分布 / 回転温度 |
Research Abstract |
昨年12月にXeclエキシマーレーザーおよび波長可変色素レーザーが搬入され、それからの3カ月間で、何とか目的とする反応を理解するためのデータを得ることに成功した。本研究の最終目標は、NHラジカルなどの不安定中間体と種々の簡単な化合物との反応速度を決定し、それに包括的な説明を加えることである。このような研究を行なう際に、いかにしたらNHラジカルのような反応中間体を発生させることができるか、また、生成した直後の中間体には、生成の際に発生する余剰エネルギーが、振動・回転・並進運動の各自由度にどのように分配されるか、ということを知ることが重要な問題である。特に、この第2の反応生成物の初期状態分布の問題は、理論的予測と直接比較し易いこともあり、それ自体、化学反応を理解する上で、重要な知見である。そこで我々は、まず、アジ化水素分子を308nmのXeclレーザーの光によって光分解してできる一重項準安定状態のNHラジカルの回転状態の初期分布をレーザー誘起蛍光法を用いて決定することにした。実験は、Xeclレーザーの出力をビームスプリッターによって2つに分け、片方は反応容器中のアジ化水素を光分解するために用い、もう片方は色素レーザーを発振させるために用いる。色素レーザーの出力はKDP結晶によって倍波とし、325nmから330nmの間で掃引させる。NHラジカルの分光学的定数は既知であるので、レーザー誘起蛍光強度の波長依存からNHラジカルの初期回転状態分布を決定することができる。なお、アジ化水素の圧力は衝突による回転緩和が起らないよう十分低くして行なう。この結果、生成直後のNHラジカルは、常温での熱平衡分布よりも遙かに高励起状態にあり、回転温度に換算して、約1000Kの状態であることが判明した。目下は、これらのデータを説明しうる中間状態の寿命や形についての考察を行なっている。
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