1987 Fiscal Year Annual Research Report
気相反応中間体の動的挙動ーレーザー誘起蛍光・位相差法による研究ー
Project/Area Number |
61430001
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 伸 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 教授 (30016042)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅本 宏信 東京工業大学, 理学部, 助手 (80167288)
綱島 滋 東京工業大学, 理学部, 教授 (20016108)
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Keywords | エキシマーレーザー / NH(C^1Π)ラジカル / 消光断面積 |
Research Abstract |
昭和62年度は, 昭和61年度に引続き, 励起状態のNHラジカルからの発光の時間分解測定による反応速度の決定を行った. XeClエキシマーレーザーからの308nmの出力を用いてアジ化水素を光分解しa^1△状態のNHラジカルを生成させる. さらにこれに色素レーザーからの325nm付近の出力を照射してC^1Π状態に励起すると, 特定の振動, 回転のエネルギーを持ったNH(C^1Π)ラジカルを生成させることができる. このNHラジカルのスペクトルの線幅を測定したところ反応系の圧力が低いときには, 非常に大きな並進運動のエネルギーを持ったホットな状態にあることがわかった. このホットなNH(C^1Π)ラジカル, および大量の希ガスを添加することにより熱平衡状態としたNH(C^1Π)ラジカルの反応速度の測定を行った. 反応する相手としては, メタン, エタン, エチレンなどの炭化水素の他に水素, 一酸化炭素などの無機化合物も選んだ. その結果, 窒素など一部の消光剤を除いては, 反応速度定数は非常に大きいこと, 反応断面積は並進運動のエネルギーの増加とともに急激に減少することが判明した. これらのことは消光過程において遠距離相互作用が重要な役割を果たしていることを示している. 実際, 測定された消光断面積は多重極相互作用のポテンシャルを仮定した衝突錯合体モデルによる計算値と強い相関を示した. またNHの並進運動エネルギーが大きい時には消光速度はNH(C^1Π)の回転のエネルギー状態にはほとんどよらず一定であった. 従来は, OH(A^2Σ^+)ラジカルの反応速度の測定などから, 一般に励起状態の二原子分子の反応速度定数はその回転のエネルギー状態によって大きく変化すると考えられてきた. 今回の実験結果は並進運動のエネルギーが大きい時には, 反応速度定数は必ずしも回転状態には依らないという新しい知見を与えるものである. このことは, 測定値を高い温度に外挿する危惧を示す.
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