Research Abstract |
1.基本史料の収集 前年に引き続き全員(特に石坂,羽田野,吉田,高井,高田)は各地の資料館に出向き基本史料(当時の新聞記事,政府刊行物,銅版画など)の集約を進め, 多量の複写資料を整えた. 2.科学技術用語の分析 かねてから注目してきたように,『回覧実記』に現れる自然科学用語,技術用語は,明治期の科学技術の様相を解明する上で電要である. 高田は,科学用語について,遠藤,吉田は技術用語について,『実記』全巻から事例を収集し,当地の米欧の学術水準との相関を解明し,また,『実記』で試みた邦訳された術語の背景などを考察した(日本科学史学会の年会に報告する予定). 3.政治史および文化史の面からの研究 田中は,自著論文が『近代天皇制の成立』(遠山茂樹編,1987年)に公刊された機会をとらえて,「岩倉使節団と大久保政〓」と題する発表を行い,永井らとの討論を通じて『実記』の政治的背景に関し多くの示唆を与えた. 一方,中野は,動物園と動物観をめぐる所見を発表し,欧米・中国・日本での動物園の起原との関連をたどりつつ,『実記』編者が見た米欧の動物園の実態を要約し,また,その理解の根底にある中国的伝統を指摘した. 4.固有名のデータベース化 『実記』全100巻に現れる固有名(国,都市,町;公共機関,企業,建造物;個人,公職,称号その他)をデータベース化し多機能的な索引を作成するべく,高井,高田,羽田野,石板,吉田の5名は,採録の対象,コンパイルの方式につき検討と試行を進め,並行して大量の素材を抽出した. 5名の地域別分担は,それぞれアメリカ,フランス・イタリア,イギリス,ドイツ圈およびロシアであるが,コンパイル方式については詳細な共同討議がなされ,ほぼ成案が得られた.
|