Research Abstract |
近年, 医療技術の進歩や高齢者人口の増加によって終末期の延長, 多様化がもたらされた. 植物状態やがんの末期であっても治療手段を組合せることにより, 長期間の生存が可能になった. これに伴って, 病院などの施設内死亡の割合も増加している. しかし, この状況は数十年前には考えられなかった問題をおこしつつある. 米国では, 植物状態や末期がん, エイズなど不治の病の治療方針決定に際して患者の意志を尊重する方策がとられており, 治療の場でも住みなれた家庭での医療・介護体制の整備が強調されている. 本年度は, 東京都区部の総合病院において, 外来患者330人, 入院患者66人, 医師48人, 看護婦157人を対象として, 終末期医療に関する調査をおこなった. 調査内容は他地域とほぼ同様で, 以下の通りであった. (1)終末期医療における3つのポイント, すなわち, 病名や病気の性質の告知, 終の場所, 治療方針の選択(延命か苦痛除去)についての意識を明らかにする. (2)医療従事者については, 更に告知や治療方針の選択について職業人としてどのように考え, 行動しているかを調べる. (3)患者の意向を医師が正確に把握しているかどうかを, 入院患者とその主治医を対にして, 一致度を観察する. 現在, 結果を解析中であるが, (3)については, 病名や病気の性質の告知に関する一致度62%, 終の場所の関する一致度40%, 治療方針の選択に関する一致度64%となり, 前年度の沖縄県の調査と比較すると, やや一致度が高いものの, 医師が患者の意向を十分に把握していないことが示された. 医療経澄学的な観点からは, 日本公衆衛生雑誌に発表をおこなった. 長野県S市において, 昭和57年〜59年に死亡した, 悪性新生物, 脳血管疾患の患者について, 死亡前6ヶ月間の国保レセプトの解析をおこない, 入院医療が在宅医療と比較して極めて高額になることを示した. 今後, 在宅医療を支援する対策が必要と考えられた.
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