自己免疫疾患の出産後発症予測とその予防に関する研究

1986 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 61480178
• Research Institution: Osaka University
• Principal Investigator: 網野 信行 阪大, 医学部, 講師 (60028694)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 青笹 美恵子 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 ; 森 政雄 大阪大学, 医学部, 助手 (00182204) ; 岩谷 良則 大阪大学, 医学部, 助手 (60168581) ; 森 英光 大阪大学, 医学部, 助手 ; 谷澤 修 大阪大学, 医学部, 教授 (30028443)
• Keywords: 自己免疫疾患 / 発症予測 / 発症予防 / 出産後発症 / スクリーニング / 橋本病 / バセドウ病 / 膠原病

Research Abstract

(1)妊娠初期における潜在性自己免疫疾患のスクリーニング:潜在性自己免疫疾患を把握する目的で、妊娠初期婦人を対象に抗サイログロブリン抗体、抗甲状腺マイクロゾーム抗体、抗核抗体、抗DNA抗体、RA、RAHAおよび抗ミトコンドリア抗体を測定した。抗体陽性の出現率はそれぞれ、5.9,15.4,17.0,3.0,0.9,3.6および0.3%であった。これらの抗体陽性者のうち30〜60%の妊婦では自己免疫疾患を中心とする何らかの合併症がみられたが、残りの例は今回のスクリーニングで初めて抗体陽性の異常が見出された。(2)潜在性自己免疫疾患からの出産後発症:上記検索で抗体陽性を示した例につき甲状腺自己抗体を中心に妊振中および出産後の経過観察を行った。抗甲状腺マイクロゾーム抗体陽性を初めて指摘された妊婦の約60%に、出産後各種の甲状腺機能異常が発生した。また出産後バセドウ病、永続性甲状腺機能低下症および慢性関節リウマチ発症もみられた。(3)出産後発症予測:自己免疫性甲状腺機能異常症は、抗甲状腺マイクロゾーム抗体が高値例ほど発症しやすく、抗体価が20,000倍以上の例では必ず甲状腺機能異常が発生することが判明した。またバセドウ病の出産後発症には、抗体価以外に妊娠初期におけるサプレッサーTリンパ球低値がその予測に参考となることが分った。慢性関節リウマチは、リウマチ因子がより高値の例でその出産後発症がみられたが、今後更に多数例を観察する必要があるものと考えられた。(4)出産後発症の予防:抗マイクロゾーム抗体価および既往歴から出産後甲状腺機能低下症の発病が予測された例に、発症前の出産直後からステロイド短期治療を行った。この方法により自己免疫性甲状腺炎の出産後増悪が予防出来ることが明らかにされ、さらに慢性関節リウマチ発症の予防に今後応用可能であると考えられた。

Research Products

• [Publications] HARUO TAMAKI et.al.: J.Clin.Lab.Immunol.20. 1-6 (1986)
• [Publications] KIYOSHI ICHIHARA et.al.: AMERICAN JOURNAL OF CLINICAL PATHOLOGY. 85-4. 469-478 (1986)
• [Publications] MIEKO AOZASA et.al.: Clinical Immunology and Immunopathology.
• [Publications] 渡辺幸彦 他: 臨床病理. 34. 65-68 (1986)
• [Publications] 青笹美恵子 他: 臨床免疫. 18. 138-145 (1986)
• [Publications] 玉置治夫 他: ホルモンと臨床. 34. 841-848 (1986)
• [Publications] 谷澤修 他: 日本産婦人科学会雑誌. 38. 791-796 (1986)
• [Publications] 網野信行 他: Pharma Medica. 4. 55-59 (1986)
• [Publications] 網野信行 他: 臨床病理. 34. 640-650 (1986)
• [Publications] 網野信行: 内科. 58. 660-668 (1986)
• [Publications] 網野信行: 綜合臨床. 35. 2202-2212 (1986)
• [Publications] 網野信行: Medical Companion. 6. 1193-1199 (1986)
• [Publications] 木村素子 他: 綜合臨床. 36. 539-542 (1987)
• [Publications] 網野信行 也: ホルモンと臨床. 34. 3-7 (1986)
• [Publications] 谷澤修 他: 助産婦雑誌. 40. 102-108 (1986)
• [Publications] 宮井潔 他: 臨床病理. 34. 125-132 (1986)
• [Publications] 網野信行 他: 代謝(臨時増刊号). 23. 53-59 (1986)
• [Publications] 網野信行 他: 医学と薬学. 15. 1180-1201 (1986)
• [Publications] 網野信行 他: 医学と薬学. 15. 1180-1201 (1986)0)
• [Publications] NOBUYUKI AMINO: "WERNER'S THE THYROID A Fundamental and Clinical Text FIFTH EDITION(ANTITHYROID ANTIBODIES)" SIDNEY H.INGBAR;LEWIS E.BRAVERMAN, 59)1526(546-5 (1986)
• [Publications] NOBUYUKI AMINO: "In Thyroid Autoimmunity Thirtieth Anniversary:Memories and Perspectives(POSTPARTUM ONSET OF GRAV〓 DISEASE)" PINCHERA.A,
• [Publications] NOBUYUKI AMINO: "In Prevention of Type I Diabetes and Autoimmune Thyroid Disease.(POSTPARTUM HYPER AND HYPOTHYROIDISM)" Baba.S;Mimura.G;Nagataki.S, 4)
• [Publications] 網野信行 他,河合忠 編: "臨床検査と医学の進歩(OK【T_4】抗原欠損症ーリンパ球機能、遺 形式、わが国における出現頻度および他疾患合併との関連についてー" 河合忠,協和企画, 4)240(133-14 (1986)
• [Publications] 玉置治夫 他: "機能細胞の分離と培養:甲状腺細胞" 丸善株式会社, 510(112-12 (1987)
• [Publications] 網野信行 他: "Annal Review内分泌,代謝(甲状腺疾患と免疫)" 清水直容 他 中外医学社, 326(166-17 (1987)
• [Publications] 網野信行 他: "産婦人科MOOK(合併妊婦の管理と検査)" 金原出版, 9)(66-76) (1986)
• [Publications] 網野信行 他: "放射線医学大系:38B内分泌;インビトロ甲状腺機能検査法" 中山書店, 230(15 (1986)
• [Publications] 網野信行: "臨床内分泌病学:慢性甲状腺炎,急性・亜急性甲状腺炎" 朝倉書店, 776(316 (1986)