Research Abstract |
本研究の目的は,陽子線治療の優れた特質である立体的不整形状に一致したがん病〓の選央的照射を適確に遂行するため,病巣,主としてX線影像化が困難な軟部組織内のがん病巣の局所進行範囲の輪郭をX線CT画面に影像として把握する臨床手段の開発である. 昭和62年度の研究においては,陽子線照射の対象とするがん病巣の境界を表現するため,その境界外側に接した健常組織内に刺入する指標と,これを刺入する器具,術式の開発を試みた. そして,1) 指標としては,種々の物質について検討した結果従来小線源照射法に使用して来たAuグレインが基礎実験の結果,CT並びにX線撮影に際して明瞭な影像を現わし,組織内埋没に際して明らかな生物学的,化学的刺戟を示さなかったことから,研究目的を満足するものとして選択し, 2) 指標の組織内刺入に関しては,イ) 消化管,泌尿器等管腔臓器壁の病巣で,内視鏡によりその局所に到達出来るものに対しては,内視鏡の生検〓子腔を通じて挿入し,直視下に上記部位に指標の刺入を可能とする先端針状の刺入器を試作し,ロ) 子宮傍結合織等,体腔を通じ体外部より触診で病巣境界を把握し得るものに対しては,従来小線源組織内照射に使用されて来た刺入器を用い,ハ) 脳腫瘍の術時遺残病巣に対しては,術創面から特定の深部に刺入し得る器具を開発した. 以上の指標,器具を使用し,現在までに,胃,食道,膀胱,子宮,脳等諸臓器の病巣の陽子線治療に本術式を適用した結果,満足すべき精度で陽子線照射を遂行し得,又本術式の旋行に際し特記すべき困難,障碑は現在まで経験されていない. なお,刺入された指標のX線像に基づき照射時設定された照射野の適確性も検討し得た. 今後は,以上開発された指標刺入術を可及的広い範囲の臓器病巣に対して試み,この術式の評価を行う予定である.
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