1986 Fiscal Year Annual Research Report
癌の温熱療法における細胞の熱耐性誘導機構及びその阻害に関する研究
Project/Area Number |
61480237
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
安徳 重敏 九大, 医学部, 教授 (40034623)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蔵 忍 九州大学, 医学部, 助手 (90037391)
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Keywords | 温熱療法 / 培養細胞 / 熱耐性 / 耐性阻害 / 分裂系図分析 |
Research Abstract |
1.マウス白血病L5178Y細胞のコロニー形成能からみた熱耐性誘導は、43℃、30分の加温後5時間で最大に達し、その後50時間まで耐性は持続し、70時間ごろより除々に消失した。この耐性を低下させるために、加温直後より5時間の範囲で種々の薬剤を培地に添加し、耐性の変化を調べた。膜作用物質であるプロカイン、リドカイン、クロルプロマジンは、いづれも耐性を低下させた。この耐性の低下は、細胞構築物質に作用するコルヒチン、制癌剤ネオカルチノスタチンにもみられた。膜の脂質酸化防止剤ビタミンE、膜の流動性を変化させるスペルミン、放射線による細胞の間期死を防護するニコチンアミドなどには、熱耐性阻害効果はみられなかった。エオジン染色性からみた間期死は、加熱直後より急激に増加し、約7時間後に最大となるが、1日後以降はエオジン染色細胞の割合は低下し、生存した細胞の増殖がみられる、細胞増殖が始まる加温1日後における上記薬剤の効果に変化はなく、加温直後に耐性を低下させる薬剤は、1日後でも同様の効果を示した。この事は薬剤の効果が、単なる細胞毒性によるものではなく、耐性の本質に作用していることを示唆している。 2.Hela細胞の微速度写眞撮影により、加温後の個々の細胞を追跡してみると、加温条件が厳しい程間期死が多く、X線照射後に多くみられる分裂死は少なかった。しかし比較的低温で長時間加温すると分裂死の割合が増加し、加温条件によって細胞死のパターンが変化することが見出された。またX線照射後にカフェインを投与すると著しい増感効果を示すのに対し、温熱ではカフェインの効果はみられず、温熱と放射線の致死作用機構に質的な違いがあることが示された。 3.今後は熱耐性と関連があるとされている熱ショック蛋白と薬剤の効果の関連について研究を継続する。
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