1986 Fiscal Year Annual Research Report
日本近世初期風俗画における服飾表現と群像構成について
Project/Area Number |
61510024
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
山岡 泰造 関西大, 文学部, 教授 (50067576)
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Keywords | 小袖文様および群像構成について、その種類と例数を図表化して、諸作品の年代決定のための一規準とする。 |
Research Abstract |
1 調査の完了した作品は次の通りである。(1)洛中洛外図屏風(上杉家),(2)洛中洛外図屏風(勝興寺),(3)豊国祭礼図屏風(豊国神社),洛中洛外図屏風(高津古文化会館),東山遊楽図屏風(同上),花下群舞図屏風(神戸市立博物館),四条河原図屏風(天桂院),阿国歌舞伎図屏風(神明社),四条河原図屏風(靜嘉堂文庫) 2 一応の調査を行った作品は次の通りである。祗園祭礼図屏風(出光美術館),歌舞伎図屏風(同上),江戸名所図屏風(同上),犬追物図屏風(根津美術館),京名所図屏風(サントリー美術館),三十三間堂通し矢図屏風(逸翁美術館) 3 その成果。小袖文様の分類から、天正一慶長前半、慶長末一元和、寛永以後と大きく三分できるように思われる。天正一慶長前半は小文と肩裾の文様構成,慶長末一元和はそれに種々な特異な文様が加わるが、その例は極めて少なく、特異な文様自体もあまり目立たないという傾向が見られる。寛永に入ると、以上の情況は一変して、文様の一つ一つが大きく目立つようになり、小袖意匠が大膽で派手な構成をとる。このような小袖文様の変化に着目して講作例を見ると、従来の年代判定よりや、溯らせた方がよいと思われるものが多い。また群像構成については、天正一慶長前半期では自然発生的で特別な配慮はみられないが、家族単位のまとまりが次第に顕著になる傾向がある。慶長末一元和期には、家族単位のまとまりが大規模に派手になると共に、男ばかりのグループ、女ばかりのグループが出現し、服飾やポーズに伊達さがみられるようになる。寛永期には前代末に出現した男グループ、女グループ間の交渉が表現されるようになり、ついで男女の間の心理的なつながりが、グループ構成の軸となり、やがて室内風俗画へと転化する。
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