1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61510208
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Research Institution | Kanagawa Prefectural Museum of Cultural History |
Principal Investigator |
川口 徳治朗 神奈川県博, その他, その他 (90124510)
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Keywords | 貝塚群 / 貝製品 / 貝輪 / 貝刃 / 構成貝類種 |
Research Abstract |
本年度の調査は関東地方および東北地方の貝塚群と貝製品のあり方を中心に検討することとした。関東地方は相模湾沿岸、東京湾沿岸、霞ガ浦沿岸地域を調査した。相模湾沿岸は貝輪以外の貝製品出土例はなく、貝輪の素材はサルボウガイ,マルサルボウガイ,イタボガキが用いられている。霞ガ浦沿岸は貝刃,貝輪の出土例が知られるが総数は多くない。東京湾沿岸は各期の貝塚から多くの貝製品が検出され、貝刃,貝輪,垂飾りなどがある。貝刃は横浜市梶山貝塚の約100例の出土例を分析調査し、その結果、形態的分類が可能であることが判明した。貝輪は二枚貝類に加え、ツタノハガイ,アカニシなど巻貝類が認められ、三浦半島では早期まで遡る。垂飾りはイモガイを加工したもので、関東地方では他に類例を見ない。東北地方では仙台湾沿岸,大船渡湾沿岸,広田湾沿岸地域を調査した。仙台湾沿岸は貝刃,貝輪が多量に出土しており、ことに貝刃は宮城県南境貝塚ではハマグリ,チョウセンハマグリを素材としたものが900点近く出土している。南境貝塚での貝輪出土量は76点と他に例がない程多く、イタボガキを主体にアカガイ,ハマグリ,アカニシなど素材も多彩である。ハマグリ製は素材の形状を考えると、腕輪としての用途に疑問を抱かざるを得ない。大船渡湾沿岸と広田湾沿岸は貝刃の出土例を知ることができない。貝輪はイタボガキ,アカガイを素材とした例が少数知られた。以上の調査によると、貝製品の種類は貝刃,貝輪が圧倒的な割合量を示すが、貝刃と貝輪とではそのあり方に差異を認めることができる。貝刃の素材は貝塚の構成貝類種と一致するところがあるが、貝輪は必ずしも一致せず、選択性の強い存在を示している。このことはそれぞれの機能,用途,あり方に違いのあったことを示唆するものであろう。今後はこれらの点に着目しつつ、他地方の貝塚群の諸例について資料を集積し、研究を継続していく所存である。
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