Research Abstract |
カワトンボ類の縄ばり防衛行動については, 昨年の分類パターンにしたがって, ニシカワトンボとヒガシカワトンボで対比させると共に, 両種(亜種)内における各行動パターンの持つ意義について, 縄ばり維持機構の観点から考察した(業績発表, 図書). コナカハグロトンボ(ミナミカワトンボ科)については, 調査河川の支流部と本流部で, 雌の獲得方法が異なった. すなわち, 支流では縄ばりによって雌の獲得を行い, その防衛行動に微妙な行動の違いはあっても, 基本パターンはカワトンボと同じであった. 一方, 本流では産卵場所が集中しているため, その場での雄密度が非常に高く, 最早縄ばりの維持はコストに合わず, 集団待機となる. この場合は, 基本パターンの幾つかは見られるものゝ, 雌の出現による飛び立ち後(見誤りによる飛び立ちも含め)の雄間の干渉を避けるような行動, つまり, 各個体が素早く元の位置に戻ってとまる行動をとっているように見受けられた. カワトンボの電気泳動については, 同所的に生息するニシカワトンボとオオカワトンボでは, 次のようになった. 泳動先端に近い3本のバンド(E_1, E_2およびE_3)が特に顕著な変異を示し, ニシカワトンボではE_1を89%, E_2を67%, E_3を11%の個体が発現した. これに対し, オオカワトンボではE_1が9%, E_2が81%, E_3が72%であった. 基本的には, E_1とE_2, E_2とE_3の組合せで, 両種(亜種)の差異が明らかにできると思われる. しかし, この数値が示すように, 必ずしも明確な差異とは言えず, むしろ, 同所性のゆえに起こる種(亜種)間交雑を示唆するものであり, 実際の観察と合わせて交雑の頻度を推定する手がかりになることが期待される. ショウジョウトンボの染色体分析は, 採集地点を増やした結果, トカラ列島を境に, 南では染色体数2nA1E9=25, nA1E9=13, 北では2nA1E9=24, nA1E9=12であることが, 一層明確となった.
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