Research Abstract |
1.トウモロコシごま葉枯病菌の突然変異株作出条件:UV, γ-線, ニトロソグアニジン(MNNG), 及びメタンスルホン酸エチル(EMS)を変異源として, 本菌分生子に対する致死効果, 突然変異誘発効果を調べた. 分生子生存率は, UV及びMNNG処理によって直線的に減少した. しかし, γ-線及びEMS処理では, 多撃説に従う生存曲線が得られた. 色素合成欠損株をマーカーとして, 各変異源処理での突然変異株の最大出現率を求めた. この結果, UV0.05%(生存率13.2%), γ-線0.07%(2.6%), MNNG0.51%(5.5%), EMS0.43%(1.4%)であった. 以上の結果から, 本菌の突然変異誘発には, MNNG及びEMSが効果的であることが判明した. 2.トウモロコシごま葉枯病菌のメラニン生合成経路の遺伝子支配:色素合成欠損株の遺伝的閉鎖部位を調べた結果, メラニン生合成経路の欠損株5種類が含まれていた. 同定した各遺伝子は次の通りである. Alb1;ペンタケタイドから1, 3, 8-THNに至る間に閉鎖部位をもつ, 表現型白色. Alb2;閉鎖部位は不明であるが, 表現型白色. Scy;サイタロンから1, 3, 6-THNへの変換が行えずサイタロンを蓄積する, 表現型サーモン色. Brn;1, 3, 8-THNからバーメロンに至る過程に欠損のある, 表現型茶色. Pgr;1, 8-DHNの酸化能を持たない. 菌そう周辺にpale greenのハローを生ずる. 子のう胞子分析の結果, Alb1, Alb2及びBrnとScy, Pgrとの間には連鎖関係が認められなかった. また, 本菌のメラニン合成経路には, 従来自動酸化と考えられていた1, 8-DHNの酸化に関与する酵素の存在が明らかとなった. 3.メラニン生合成経路欠損遺伝子と病原性:遺伝子Pgrは病原性に関与するとされるフェノール酸化能を支配している. 予備実験の結果, Pgr保有株は, 野生型株と比較し, 病斑形成が劣っていることが明らかであり, 現在, 検討中である.
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