1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61560158
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浜谷 稔夫 東大, 農学部, 教授 (10011933)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶 幹男 東京大学, 農学部, 助手 (00152645)
倉橋 明夫 東京大学, 農学部附属北海道演習林, 助手 (80012087)
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Keywords | トウヒ属 / アカエゾマツ / エゾマツ / 節間交雑 / 天然雑種 |
Research Abstract |
トウヒ属のトウヒ節(O)とハリモミ節(P)の樹種は互いに生育特性を異にするので、両者の長所を併有する造林材料を作る目的で従来も節間交雑が試みられたが、ほとんど成果がなかった。ところが近年、東大北海道演習林の苗畑で育成したアカエゾマツ(P)の苗の中にエゾマツ(O)との天然雑種と推定されるものが観察されたので、その種子産地などを詳しく調べたところ、雑種であることがほゞ確認された。本研究はこの知見に基いて、国内の両節樹種が分布域を共有する地域を対象として天然雑種の発見に努め、併せてそれらの特性及び雑種成立の機構の解明を目的として進めているものである。 本年度は、本州では、長野県八ケ岳西岳地区,全金峯山系,栃木県高原山で調査を行った。八ケ岳のヤツガタケトウヒ(P),ヒメバラモミ(P)の保存林では公刊資料がないので群落調査を行ったが、遷移のため老齢化・衰弱が目立つ。高原山は山体上部がイラモミ(P)の連続した森林である。3個所ともに近くにトウヒ(O)の自生集団が見出されず、金峯・高原両山に稚樹1本ずつを発見したのみである。(栃木県日留賀岳にイラモミ新北限地を発見) 北海道では、道東の足寄,置戸及び留辺蘂,道北中川,道央白金と山部でそれぞれ調査を行った。置戸と白金に各1本,山部に2本の推定天然雑種が記録された。また新得と足寄で雌阿寒麓茂足寄アカエゾマツ1級採種林を種子源とする人工林を調査したところ、新得で5個体が雑種と推定された。これらの個体はいずれも、球杲種鱗の形状,針葉横断面の形と気孔列の分布,幹樹皮の色と裂目,一年生枝の有毛性でアカエゾマツ,エゾマツ両種の中間的な特徴を示していた。また、新得人工林での調査では、雑種個体は春の開芽期の早遅及びエゾマツカサアブラの寄生度合でも中間的であったが、両母種の周囲木に勝る樹高・直径生長を示してあり、交雑育種上の希望を持たせるものであった。
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