1986 Fiscal Year Annual Research Report
イオノフォア抗生物質によるルーメン発酵の転換機作に関する研究
Project/Area Number |
61560326
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
星野 貞夫 三重大, 農学部, 教授 (90024546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 泰男 三重大学, 農学部, 助手 (50153648)
脇田 正彰 三重大学, 農学部, 助教授 (40024575)
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Keywords | イオノフォア / サリノマイシン / 消化管内容の移動速度 / 窒素保留 / ルーメン / 揮発性脂肪酸 / メタンガス / 水素ガスの蓄積 |
Research Abstract |
4頭のヒツジを用い、飼料にサリノマイシン(SL)を20ppm添加給与し、飼料の消化管内通過速度、消化率並びにルーメン内性状に及ぼす影響を調査した。SL給与によって、ルーメン及び大腸の内容物通過速度は、液状部、固形部とも抑制される傾向がみられた。消化率は、SL添加によってやや低下したが、窒素保留割合は増加した。ルーメン液の揮発性脂肪酸(VFA)は、SL給与によってプロピオン酸が増加し、酢酸、酪酸が低下した。これらの結果から、SLの飼料効率改善効果は、SLがVFA生産パターンを変更するだけでなく、消化管内容物の通過速度を抑制することにかかわっていることが明らかになった。 ヒツジのルーメン内容物にSLを3〜200ppm添加しin vitroで培養すると、二酸化炭素やメタンガスの生産が抑えられ、総ガス生産量にも減少がみられるが、水素ガスの蓄積が観察された。このときVFA生産はSL給与同様、プロピオン酸生産の増加と酢酸生産の減少がみられた。あらかじめ20ppmのSLを飼料に添加給与しているヒツジから採取したルーメン内容物を培養した場合には、二酸化炭素、メタン並びに総ガス生産量の減少がみられるが、水素ガスの蓄積はおきなかった。SL給与によるガス生産量の変化をみると、二酸化炭素は給与1日目から減少するが15日目に有意に減少する。メタンはSL給与2日目から有意に減少し、以後も減少が持続する。水素はSL給与1日目には増加するが2日目以降は給与前の水準にもどることが確められた。これらの結果は、SLがルーメン発酵で生産される電子の流れをメタン生産からVFA生産、とくにプロピオン酸生産の方向へ変え、それが飼料効率の改善に寄与していることを示している。また、この発酵パターンの変更は短時間のうちに適応が成立し、水素がルーメンに蓄積することはないことが明らかにされた。
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