1986 Fiscal Year Annual Research Report
細胞増殖における蛋白質燐酸化酵素の役割-特に蛋白質分解酵素に注目して-
Project/Area Number |
61570121
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Research Institution | 福井医科大学 |
Principal Investigator |
山村 博平 福井医大, 医学部, 教授 (90030882)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 俊一 福井医科大学, 医学部, 助手 (40155833)
箸本 英吉 福井医科大学, 医学部, 助教授 (20116239)
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Keywords | 細胞増殖 / 蛋白質燐酸化反応 / 【Ca^(2+)】燐脂質依存性蛋白質燐酸化酵素(Cキナーゼ) / ホルボールエステル / S6蛋白質 / 【Na^+】 / 【H^+】交換輸送系 / プロテアーゼ / 制限消化 |
Research Abstract |
細胞増殖因子の作用機序については【Ca^(2+)】燐脂質依存性蛋白質燐酸化酵素(Cキナーゼ)を介する経路と介さない経路の存在が明らかにされつつある。一方発癌プロモーターであるホルボールエステルはジアシルグリセロールと同様Cキナーゼを活発化するが細胞増殖促進作用も有し蛋白合成と関わり合いの深いリボゾーム蛋白質S6の燐酸化を亢進する。Cキナーゼは通常細胞膜上でその生理作用を発揮することから細胞膜に結合した本酵素の性状をまず解析した。その結果【Na^+】イオン強度の増加やpHの上昇(アルカリ化)に伴ってCキナーゼが膜結合性のプロテアーゼにより制限消化を受け活性化される事実を見出した。このような【Na^+】イオン強度やpHの変化は細胞膜の【Na^+】/【H^+】交換輸送系が活性化された状況に対応しており、Cキナーゼの活性化が外来刺激に呼応した細胞内【Na^+】流入による情報伝達反応と結びつく可能性がある。またホルボールエステルによる【Na^+】/【H^+】交換輸送系の活性化は種々の細胞系で証明されている。このようにして細胞膜から制限消化により遊離した活性化型の酵素(Mキナーゼ)は多彩な触媒能を有し、たとえばS6蛋白質の少なくとも3つのセリン残基を燐酸化する。またCキナーゼの活性化に関与するプロテアーゼは一連の阻害剤の解析結果から徳島大学市原研究室で見出されたトリプシン様セリンプロテアーゼである可能性が強い。またラット再生肝におけるS6蛋白質の燐酸化活性は、正常に比して約50%促進していた。このS6キナーゼも種々の解析結果よりMキナーゼの可能性が考えられる。現在Mキナーゼの抗体を用い細胞レベルでこのような反応機構を実証することを検討している。外来刺激による【Na^+】/【H^+】交換輸送系の活性化とそれに共役した膜結合性Cキナーゼの制限消化による活性化機構が証明されれば環状ヌクレオチドや【Ca^(2+)】によって説明できない多くの生理現象の解明にも寄与することが期待される。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Eikichi Hashimoto: Biochemistry International. 12. 539-547 (1986)
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[Publications] Eikichi Hashimoto: FEBS Letters. 200. 63-66 (1986)
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[Publications] Akira Negami: European Journal of Biochemistry. 157. 597-603 (1986)
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[Publications] Akira Takeda: FEBS Letters. 210. 169-172 (1987)
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[Publications] Keiko Sakai: Biochemistry International. 14. 63-70 (1987)
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[Publications] Eikichi Hashimoto: Biochemistry International.