Research Abstract |
昭和61年度の本研究によって確立された腸内Clostridiumの分離法および選択培地を用いてヒトの腸内より分離されたClostridium spp.の糖分解性状, 生化学的性状, 代謝産物, 薬剤感受性などによって分類を行ったところ, おおよそ4群に分けられた・すなわち, 蛋白分解性および醗酵性の強いグループ, 蛋白分解性の強いグループ, 醗酵性の強いグループおよび両性質が弱いグループの4群である・さらにこれらの分類体系に基づいて, 食餌成分, 発癌および加齢の腸内Clostridiumの菌種構成に及ぼす影響を解明する研究の一環として, 健康成人8名の高肉食摂取時におけるClstridium spp.の変動を検索したところ, 分離株108菌株の内, 醗酵性が強いC.paraputrificum,C.innocumおよび蛋白分解性の強いC.perfringensの菌数が高食肉によって増加し, また, 日本人(農村)とカナダ人(都市)の腸内Clostridium spp.の構成を比較すると, 168菌株が分離され, カナダ人において醗酵性の強いC.coccoidesおよびC.tertiumの菌数, C.innocuumの検出率が有意に高いことがみとめられた・さらに大腸癌患者(62才〜76才, 10名)の腸内Clostridiumを検索するとC.innocuum, C.paraputrificumおよびC.coccoidesの菌数が対照群(老人, 10名)のそれに比べて有意に高く, 一方, C.perfringensの菌数・検出率に著しい差は認められないことが明らかにされた・また, 年齢差(特に, 20〜30歳代, 15名と60歳以上15名の2グループ)による腸内Clostridium spp.の構成を検索すると, 208菌株が分離され, そのうち, 60歳以上の老人で蛋白分解性および醗酵性の強いC.paraputrificum, C.innocuumおよびC.perfringensの菌数が高いようであった・このように発癌, 特に結腸癌との関係が深い高肉食・高脂肪食の摂取や老化によってClostridiumの菌種構成が変動することが明らかにされた.
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