1986 Fiscal Year Annual Research Report
赤痢菌の宿主細胞への侵入および炎症惹起能のメカニズム
Project/Area Number |
61570223
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Research Institution | 国立公衆衛生院 |
Principal Investigator |
岡村 登 公衆衛生院, その他, その他 (00111592)
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Keywords | 赤痢菌 / ELISA法 / 【I】相抗原 / 血清の殺菌作用 / LPS / リポ多糖 |
Research Abstract |
今年度の研究の経過は当初の計画とは多少前後することはあったが、目的とした研究実績を得ることができた。今年度の結果をさらに発展させ、次年度には当初の計画のすべてを完了することができると考える。 【I】.D群赤痢菌の大型プラスミド上にある【I】相抗原遺伝子のクローニングに関しては、プラスミドDNAを制限酵素で切断しcosmid vectorにクローニングして大腸菌K-12で【I】相抗原遺伝子を発見させることができた。しかし、クローニングしたDNA断片は分子量約40Mdalとまだ大きく、さらにプラスミドvectorを用い、より小さなDNA断片のクローニングを試みている。 【II】.ヒト血清に対する赤痢菌の感受性に関する研究はほぼ終了することができた。正常人血清に対する感受性が赤痢菌種間で差異が認められることはすでに報告した(日本細菌学雑誌39:482,1984)が、25人の赤痢患者の血清についてもその患者の起因赤痢菌種とは関係なく、正常人血清と同様の殺菌が認められた。このような菌種間の感受性の相違は補体系のclassical path-wayが主に関係していることが示唆された。 【III】.D群赤痢菌(【I】相菌)のLPSを抗原としてELISA法により赤痢患者血清中の各免疫グロブリンクラスの抗体価を測定した。その結果、IgA、IgMが発症後7日目、IgGでは12日目頃に健常人と比較して有意に高い抗体価を示した。特にIgA抗体価は健常人およびD群以外の赤痢菌による患者の血清よりも高い抗体価を示し、IgG,IgM抗体よりも交差反応が少なかった。このようなELISA法によるLPSに対する抗体価(特にIgA抗体価)の測定は赤痢の補助的診断法として利用できる可能性を示唆した。
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[Publications] 岡村登: 日本細菌学雑誌. 40. 857-882 (1985)
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[Publications] Noboru Okamura;R.Nakaya;H.Yokota;N.Yanai;T.Kawashima: Bifitobacteria and Microflora. 5. 51-55 (1986)
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[Publications] 高橋和哉,吉田洋子,岡村登: 日本細菌学雑誌. 42. 378 (1987)
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[Publications] 岡村登 ほか: 感染症学雑誌. 61. 162 (1987)
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[Publications] 岡村登: "感染の成立とその臨床" 日本臨床社, 202 (1986)
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[Publications] 蜂須賀養悦 監修.岡村登: "細菌学はここまで進んだ" 菜根出版, 464 (1986)