Research Abstract |
[目的]食道癌における性差の要因の1つとしてアンドロゲンの影響に着目しラット発癌実験を行った。今年度は、臨床的にエストロゲン受容体陽性乳癌症例において抗エストロゲン剤療法が有効であることから、実験食道癌におよぼす抗アンドロゲン薬剤の影響について検討した。[材料と方法]発癌物質は0.003%のAMN(N-Amyl-N-methylnitrosawine)を飲料水として、非ステロイド性アンドロゲン受容体拮抗薬剤はFlutamide(Sch13521 Schering Corporation)を20mg/day飼料に混じて連日投与した。実験物として生後6週令SD系雄および雌ラットを用い、去勢ラットは実験開始1週間前に作成し、以下の如く4群に分離して発癌実験を行った。【I】群:AMNを単独投与した対照群、【II】群:去勢ラットにAMNを投与した去勢群、【III】群:【I】群にFlutamideを併用投与したFlutamide群、【IV】群:【II】群にFlutamideを併用投与した去勢・Flutamide群、以上の実験系において、AMN投与開始後8週目より2週間隔で18週まで観察した。[結果および考察]雄ラットの発癌率は、AMN投与8,10,1214,16,18週各々対照群(n=58)0%,50%,72%,63%,100%,100%、去勢群(n=60)0%,50%,25%,75%,100%,100%,Flutamide群(n=16)0%,0%,33%,66%,50%,50%,去勢、utamide群(n=40)0%,0%,0%,14%,37%,87%であり、去勢・Flutamide群の発癌率がもっとも低く、対照群、去勢群との間にそれぞれ差を認めた。(P<0.01,P<0.01)。AMN投与8,10,12,14,16,18週の雌ラット発癌率は、対照群(n=60)0%,0%,27%,27%,70%,100%,去勢群(n=43)0%,12%,62%,50%,75%,100%,Flutamide群(n=19)0%,0%,0%,0%,66%,50%,去勢・Flutamide群(n=37)0%,0%,0%,28%,28%,100%,であり、去勢群の発癌率が最も高く、対照群、Flutamide群、去勢・Flutamide群との間にそれぞれ差を認めた(P<0.05,P<0.01,P<0.01)。以上のことから、AMN誘発ラット実験食道癌において非ステロイド性アンドロゲン受容体拮抗薬剤のひとつであるFlutamideの発癌抑制効果が示唆された。
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