1986 Fiscal Year Annual Research Report
歯科領域におけるヘルペスウィルスの潜伏・再発機構に関する研究
Project/Area Number |
61570856
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
清水 文雄 東北大, 歯学部, 助手 (10162710)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関沢 剛 東北大学, 医学部附属病院, 助手 (50150264)
佐藤 譲 東北大学, 医学部附属病院, 助手 (60125565)
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Keywords | ヘルペスウイルス / 歯周組織 / 三叉神経節 / 急性増殖感染 / 潜伏感染 / 再発機構 |
Research Abstract |
本研究の目的はHerpes simplex virus(HSV)【I】型と三叉神経支配領域の歯髄、歯周組織などにおける疾患との病因論的因果関係を動物モデルを用いてウイルス学的に、神経病理学的に追究することにある。61年度の目的は、上記の目的を達成するために、その基本となるHSVの口腔組織経由による三叉神経節内急性増殖感染を確認し、更に同神経節内で潜伏感染へ移行するかを知ることにあった。6-8週齢Balb/cマウスの上顎右側歯肉及び右側下唇にHSV-【I】型の2.5-3X【10^6】PFUを接種した。感染後5日目に、三叉神経節を摘出し、これを乳濁化(ホモジナイズ法)、感染性ウイルスの証明を試みた。その結果、右側上顎歯肉及び右側下唇経由で、HSVが三叉神経節に到達し、急性増殖感染を起すことが認められた。しかも、ウイルス接種を受けた側の神経節のみに感染が成立し、反対側の神経節にはウイルスが到達しないことが明らかにされた。次に潜伏感染が成立したか否かを知るために、感染1か月後に、神経節を乳濁化しin vitroで培養した。一方では、神経節を一魂として培養した(Explant法)。その結果、HSVは右側上顎歯肉経由で、同側三叉神経節に潜伏感染を起すことが示された。その頻度は60%で、残りの40%のマウスからHSVを検出できなかった。これは接種ウイルス量と関係しているかもしれない。現在、我々はn-Butyric acidがin vitroでHSVの感染力を高めることを見い出し、この使用を検討中である。下唇経由でHSVを接種したマウスの三叉神経節にウイルスを証明できなかった。このルートの場合、一般に検出率が悪いと報告されているが、我々の場合、検出が皆無であった。接種ウイルス量、n-Butyric acidの使用の検討の余地がある。 以上の研究結果から、HSVは上顎歯肉経由で三叉神経節に潜伏感染することが証明された。この系を用いて、ウイルスの再発機構及びその因子(抜歯、レザー照射など)の解明の予定である。
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