Research Abstract |
本研究は, 仮封材使用期間中に象牙細管を閉鎖して歯髄を保護し, その上に歯質を強化すると考えられるHY剤を歯科用硬石こうに添加して, 石こうの硬化時の膨張による窩洞の緊密な封鎖効果をも期待できる石こう系仮封材を試作することである. そこで今回は, HY剤の象牙質への作用を調べるために, HY剤のみを象牙質に作用して, HY剤中の各成分の象牙質への取り込み状態, そして象牙質表面の性条の変化について検討を行った. (実験方法)新鮮抜去臼歯(人歯)の歯〓部を切断し, 象牙質を露呈させ, 注水下エメリーペーパーを用いて, 600番まで研磨した後, HY剤をその上に作用させ, 37°Cに保持した人工唾液と類似した組成を有する石灰化溶液(リン酸水素カルシウムを飽和したリン酸一カリウムの0.5モルのpH45の水溶液とリン酸二ナトリウムの0.5モルのpH9.0の水溶液を使用直前に混合(pH7.0)したもの)に1週間, 1ケ月, そして6ケ月間浸漬した後, 象牙質表面のHY剤を除去し, マイクロビッカース硬さ(荷重200g, 保持時間15秒), そして接触角(蒸留水, 0.001ml)の測定を行った. その上, 象牙質表面上のHY剤を除去せず, そのままレジン包埋し, 頬舌的に割断して, HY剤の成分(F,Zn,Sr)についてEPMAを用いて分析を行った. (結果と考察)硬さそして接触角の測定の結果, HY剤を作用した象牙質は, その作用時間が長くなるにつれて, 表面の硬さが増し, 接触角も大きくなることが明らかになった. その上, EPMAを用いた分析の結果, HY剤中の各成分(F,Zn,Sr)の象牙質への浸透は, HY剤を作用して1週間後の試片で確認され, さらにHY剤の作用時間が長くなるにつれて浸透深さも深くなることが明らかになった. これらのことから, HY剤は歯質の強化に貢献することが推察される.
|