1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61580085
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小沼 通二 慶応大, 経済学部, 教授 (70027340)
|
Keywords | 物理学史 / 素粒子 / 中間子 / くりこみ理論 / 湯川秀樹 / 朝永振一郎 / 湯川記念館史料室 |
Research Abstract |
1930年代にはじまった素粒子物理学の研究は、今日に至るまで多面的な発展を続けてきた。この中で、湯川秀樹・朝永振一郎をピークとする日本の研究が果してきた役割は非常に大きい。本研究は、日本における素粒子の研究の展開,欧米への伝播,欧米の研究との関連,社会との関係などについて、主に1960年代までに時期を限り、3か年計画で明らかにしていこうとするものである。第1年目の今年度は、問題を提起・発展させ、第2・第3年度には、新しい問題をとりあげつつ、まとめていくことを構想し、この線に沿って第1年目の研究計画を進めた。 今年度は具体的には、京都大学湯川記念館史料室の未公刊資料の整理・分析をおこない、とくに新たに利用可能となった湯川秀樹関係の往復書簡を中心にしたまとめをおこなった。その結果は、すでに日本物理学会第42回年会において発表したが、近く論文としてまとめ、ひきつづき図書の形での刊行する計画の中に含める準備を進めている。 発表された論文,当事者の回想・日記などに、これらの書簡をあわせて比較研究することにより、これまで明らかでなかった物理学史上の成果が得られているが、とくに、朝永振一郎著作集別巻1に収録されている日記(1937年以降)と書簡や、1948年に創刊された素粒子論グループの機関誌「素粒子論研究 に掲載された多数の海外からの書簡の比較研究からは興味深い結果を得ることが可能となった。中でも、湯川秀樹の中間子論の展開を、当時ドイツに滞在していた朝永の眼を通して見、第2次世界大戦直後の朝永振一郎のくりこみ理論の展開を、R.オッペンハイマーや、直後にアメリカに渡った湯川の眼を通してみることにより、これらの日本の成果が殴米に与えた衝撃をはじめて明らかにすることができたことは興味深い。
|